障害者差別解消法が平成25年6月26日に公布され、平成28年4月1日から施行されます。すべての国民が、障害の有無によってサービスの提供を拒否されたり制限されたりすることを禁止する法律です。不当な差別的取扱いは禁止され、障害者への合理的配慮を公的な機関に義務付けます。(民間事業者には合理的配慮の努力義務) 社会への参加を制約している社会的障壁を取り除くことが必要であり、そのためには障害者を含む国民一人ひとりが自発的に取り組んでいくことが必要とされています。
インクルーシブな社会を形成するために、障害者との対話を通して、障害について学び、どのような行動を取るべきかを考える研修が、1990年代にイギリスで始まり、『DET; Disability Equality Training;障害平等研修』と呼ばれています。この研修で最も大切にしていることが、「障害者との対話を通して」という点です。健常者が「障害とはこういうもの」と教えるのではない、ということです。障害当事者との対話から、障害をめぐる問題・課題を自ら見い出す発見型学習です。
DETを日本でも普及させようとJICAの国際協力専門員の久野研二氏が取り組まれています。2005年よりDETファシリテーターを途上国や日本で育成されています。DETファシリテーターになれるのは障害当事者のみで、障害当事者がDETの司会・進行を行います。現在、JICAのプロジェクトでDETファシリテーターの育成をコロンビアで行っていると聞いています。
先日、久野氏と二名のDETファシリテーター(車いす使用者と視覚障害者)が行う、DET紹介セミナーに参加し、どのようにしてDETが行われるのか体験してきました。現在、世界のさまざまな企業で、新人教育の一つにDETが取り入れられているそうです。障害者差別解消法が施行されようとしている今、日本でも広くこの研修が認知され、普及することは非常に素晴らしいことであり、応援したいと思います。
参照
・内閣府 障害を理由とする差別の解消の推進
・理学療法ジャーナル 特集 障害者権利条約の実現と理学療法
・障害平等研修(DET)フォーラム