2016年3月8日火曜日

国際緊急援助隊(JDR)

 国際協力機構(JICA)は、ボランティア派遣事業だけではなく、非常に多くの事業を行っています。その一つが、国際緊急援助隊(Japan Disaster Relief, JDR)の派遣です。JDRのチームには、救助チーム・医療チーム・専門家チーム・自衛隊部隊があり、それぞれの役割に応じて、被災国からの要請があれば、出動します。
 JOCVリハビリテーションネットワーク(PT・OT・STのJICAボランティア経験者の集まり、通称リハネット)からの情報で、JDR医療チームにおける理学療法士の役割に期待が高まっている、という話を聞きました。そこで、私なりにいろいろ調べて見ました。

①JDRについてはJICAのウェブサイトをご参照ください→ http://www.jica.go.jp/jdr/about/jdr.html
②最近の日本理学療法士協会からの会誌にJDR医療チームとして派遣されたPTさんの記事があります→ http://www.japanpt.or.jp/upload/japanpt/obj/files/activity/news298/298_20.pdf
③2015年のネパールの大地震における理学療法士の役割についての文献が、WCPTのサイトからリンクされていました→http://www.wcpt.org/sites/wcpt.org/files/files/Nepal-JOSPT-sept2015-editorial.pdf
④WHO(世界保健機関)の災害時の障害とリハビリテーションについての特設ページです→http://www.who.int/disabilities/emergencies/en/
⑤同じくWHOから。病気・外傷の発生からリハビリテーションに至るまでの範囲をカバーできるチームが必要、と7段落目に書かれています→http://www.who.int/hac/emergency_workforce_february_2016/en/
⑥国境なき医師団(MSF)のclinical guidelineです。MSFの医師が現場で遭遇するであろう疾患の、現場での診断方法や処方の仕方が書かれています→http://refbooks.msf.org/msf_docs/en/clinical_guide/cg_en.pdf

 大規模災害が発生すると、大勢の怪我人や病人が医療施設に集まります。医師や看護師は、できるだけ多くの患者を救うため、緊急時のマニュアルに則り対処していきます。しかし、場合によっては対応可能な患者数を越え、病院はパンク状態になるかもしれません。さらに、治療が済んでも帰る所がなく、病院に患者が留まる場合もあります。帰る場所があっても、松葉杖がないと歩けない患者もいるでしょう。車イスで帰ろうにも、道が悪すぎて進めない可能性も考えられます。病院の近くにいた方が何かあった時に安心、と動こうとしない人もいるかもしれません。
 そこで、WHOは、災害時の外傷治療のみならず、その後のリハビリテーションにも対応する必要性を認識し始めたようです。効率よく治療し、退院させ、次の患者を受け入れる、という回転率の向上が重要です。そのために、退院先として自宅がない患者を受け入れる施設の設置(リハビリセンターのようなもの?)や、病院へと繋がる道の整備、歩行補助具や車いすなどのデバイスの提供・フィッティング・使用方法の指導などを行わなければならないと思います。
 第50回PT学会で、今後理学療法士には「社会参加・国際貢献」が求められてくるという提言があったそうです。国際貢献として青年海外協力隊に参加する理学療法士が増えることを願うとともに、大規模災害時に活躍できる人材を増やすための啓蒙活動も今後、必要でしょう。その一つの方法がJDRに登録する理学療法士を増やすことです。
 JDRに登録する条件に、PTとしての経験が5年以上、英検2級程度以上、などがあり、おそらく多くの人が語学の面で自身のキャリアにJDRという選択肢を除外してしまうだろうと思います。また、外国に行ったことのない人も多く、初めての渡航先が被災国というのもハードルが高いでしょう。どんな環境でも適応できる、なんでも食べられる、どこでも寝れる、外国語でもコミュニケーションが取れる、などの資質を持った人となると、青年海外協力隊の経験者が最適なのではないかと思っています。今後、理学療法士の帰国隊員にはJDRについての案内を帰国時オリエンテーションで行ってもいいのではないか、と思います。
 WHOが先月に⑤を出したように、今まさに理学療法士の緊急援助での活躍が期待されています。「鉄は熱いうちに打て」。4月からJDRの仮登録が始まる予定だそうなので、私も登録しようと思います。