昨日、大阪府理学療法士会が、現在も派遣中のJRAT大阪の活動についての報告会を開催しました。そもそもJRATとは、どういうものなのか、私自身、よく分かっていなかったのですが、報告会に参加し、様々な情報を得ることができました。
JRATの始まりは2011/3/11の東日本大震災でした。発災後2ヶ月が経とうとする5/5に10団体が結束して作ったリハチームが現地の避難所に入りました。しかし、入ることができたのはたった3つの避難所でした。それは、あまりに派遣した時期が遅かったからです。発災後、すぐに行かなければ、ボランティアは必要なところに配備され、後から来た人には「もう間に合っています」ということになります。その教訓があり12団体が協力し、JRAT(大規模災害リハビリテーション支援関連団体協議会)を作り、平時からの備え(研修・啓発等)を行っています。
財源は豊富にあるわけではなく、今回の熊本地震における派遣は、JMAT(医師会の災害医療チーム)の傘下に入り、災害救助法がカバーできる範囲での費用弁済される予定だそうです。しかし活動全てが自腹になってしまう可能性もある、とのことでした。
JRATが全国レベルでの災害リハビリコーディネーター養成研修会を実施し、その後、各都道府県で地域JRATが発足しています。JRAT大阪は比較的活発に早い段階から活動をしているという話でした。
今回の熊本地震の発災翌日4/15には東京にJRAT災害対策本部が立ち上がり、熊本にも現地のJRAT災害対策本部が立ち上がりました。発災後9日目には医師を含むチームが現地に入り、活動を開始しました。東日本大震災の時と比較すると初動がかなり早くなっています。
リハ関係職種が災害医療チームに入る利点として、複数の報告者の発表を聞いてまとめてみると、次のようになります。
1、リハトリアージができる
2、廃用予防、生活不活発病の予防ができる
3、ICFを用いた考え方ができる
4、ADLに関しての知識が豊富
5、環境設定が得意
6、他職種との連携が得意
リハトリアージとはリハ的な関わりの必要度に応じて被災者を選別することで、JRATのマニュアル(無料ダウンロード可→http://www.jrat.jp/images/PDF/manual_dsrt.pdf)にも記載されています。また被災者の疾患や生活環境によっては廃用症候群に至る可能性もあり、そうならないためのICFの枠組みでの思考が重要です。特に環境因子は大きく影響を与え、環境設定を適切にすることで廃用症候群を防げる、ということも分かりました。(前回の記事に書いた、自宅よりも動く環境になり被災前よりも元気になった高齢者の例)
また、今回JRATは私が活動したAMDAが入っている避難所には介入をしなかった、とのことでした。AMDA医療チームにPTが入る前にJRATが訪問しリハ的な介入が必要そうな人の選別がされ、AMDAにPTが入ってから、そのPTに引き継がれたそうです。AMDAのPTは1か所で活動しており、他の避難所の状況はあまり知らなかったのですが、いくつかの避難所を回っているJRATから見ると、AMDAが入っている避難所は、衛生面・環境面・支援体制等が非常に整備され、「さすがプロの医療支援団体だなぁ」という印象だったそうです。
今回の報告会で、AMDAで活動した自分自身の経験と、JRATから見た視点が融合できて、非常に勉強になりました。
具体的な活動についても報告がありましたが、詳しく書くときりがないので、また別の機会に紹介できたらさせていただきます。
青年海外協力隊(2011年~2013年、ドミニカ共和国)、国際緊急援助隊(2019年4月、モザンビーク)で理学療法士として活動しました。 一理学療法士が世界を舞台にできることとは何か?備えておく知識・技術は何か?青年海外協力隊のその後、緊急医療援助などを堅苦しく綴っています。 このブログを通して、同じ志を持つ人々、この道に進もうと考えている人々などと情報交換できればと考えています。よろしくお願いします。 また、世界理学療法連盟から配信されるニュースの翻訳も、当ブログで取り上げています。是非、ごらん下さい。
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2016年5月8日日曜日
2016年5月3日火曜日
熊本地震 緊急医療援助 理学療法士編
4月14日から続いている熊本地震により、被災された方々にお見舞い申し上げると共に、犠牲になられた方々およびその家族の方々にお悔やみ申し上げます。一日も早い復興を願い支援させて頂きます。
私は4月28日から5月2日までの5日間、熊本の益城町にある避難所で医療支援をしているAMDAのボランティアスタッフの一員として活動させて頂きました。AMDAの医療チームは医師・看護師・薬剤師・理学療法士・鍼灸師・介護福祉士・調整員等で構成されています。
前任者として2名の理学療法士が避難所で活動しており、私がその活動を引き継いだ形です。前任者は避難者の中からADLの低い方、低下するだろうと予想される方に対して離床を促したり、離床しやすい環境の整備をして下さいました。生活環境の改善として、ベッドが必要な方に医療用ベッドや災害支援用の段ボールベッドを設置しました。数に限りがあるベッドなので、優先度の高い方にできるだけ使って頂けるように、医師と相談しながら、また周りの避難者に了解を取りながら、トラブルにならないよう行われました。
前任者として2名の理学療法士が避難所で活動しており、私がその活動を引き継いだ形です。前任者は避難者の中からADLの低い方、低下するだろうと予想される方に対して離床を促したり、離床しやすい環境の整備をして下さいました。生活環境の改善として、ベッドが必要な方に医療用ベッドや災害支援用の段ボールベッドを設置しました。数に限りがあるベッドなので、優先度の高い方にできるだけ使って頂けるように、医師と相談しながら、また周りの避難者に了解を取りながら、トラブルにならないよう行われました。
段ボールベッド |
同様に、理学療法的な介入のし過ぎには気をつけないといけませんでした。「なぜあの人だけリハビリの先生が毎日来るの?」となってはいけません。理学療法士のボランティアが一人や二人では避難所の数百人をみることは到底できません。また、地元の医療に徐々にバトンタッチしていく必要があるため、地元で今後受けられる理学療法以上の理学療法も行うべきではないでしょう。
私が行った活動は、段ボールベッドの作成や、前任者が行った環境設定のフォローアップ、共有スペース(出入り口や通路など)に潜む転倒の危険のある場所の修繕、要介護者の離床の促しやレクリエーション、震災により骨折した避難者の動作指導などです。
段差解消 |
他の団体から歯科医や栄養士、福祉用具などの支援も頂き、また近隣の老人福祉施設で要介護者の入浴もして頂きました。
栄養師ボランティアとAMDA医師・PTによる聞き取り (避難者様の写真使用許可あり) |
疲労や脱水などによる体調不良の方や、腰痛・肩こり・頭痛などの症状の方が多く、鍼灸師の方がかなり忙しく治療をされていました。
医療チーム回診 |
私の活動はたった5日間で終わり、支援できたことと言えば、ほんの少しのことだと思います。しかし、小さなことの積み重ねで前に進んでいくものだと思っています。チームの医師が「ホームランは打たなくてよい、送りバンドをするつもり」で活動しようとおっしゃっていました。支援は永遠に続くのではなく、減っていくもの・終わるものであり、地元の力で復興できるようになるまでの繋ぎであることを学びました。なので、私ができたことは少しのことでしたが、被災者の方の喜ぶ姿を見ることができたし、役に立てたのではないかと思います。そして、私自身も医療や福祉の原点を見たようで、非常に勉強させていただきました。
この活動は、被災地の避難所を借りて、させて頂いた活動であり、決してやってあげた、という活動ではありません。被災者の方々に感謝させていただきます。
<リンク>
AMDA http://amda.or.jp/
理学療法士に関するAMDA記事
速報9 http://amda.or.jp/articlelist/?work_id=4983
速報10 http://amda.or.jp/articlelist/?work_id=4989
速報11 http://amda.or.jp/articlelist/?work_id=4993
速報12 http://amda.or.jp/articlelist/?work_id=4995
速報14 http://amda.or.jp/articlelist/?work_id=5012
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JRAT 大規模災害リハビリテーション支援関連団体協議会