2016年6月6日月曜日

熊本地震 海外NGOでのOTの活動

緊急援助においては、多くの日本の団体が様々な形で援助を行っていますが、それに加えて外国の団体も熊本に来て援助をして頂いています。今回は、海外医療系NGOに所属し活動した作業療法士(OT)の体験談を紹介します。このOTさんは、私の友人で、私のよき理解者でもあります。
今回所属した団体はアメリカのNGOで、医療系の人道支援・被災地復興支援を世界各地で行っています。この団体からプログラムオフィサー、公衆衛生の専門家、心理士、ITの専門家が来日しており、その他は現地雇用をしています。現地雇用がこの団体のチームの8割ほどを占めます。海外NGO故に通訳も現地雇用しています。
事務チーム、ロジスティックス・調達チーム、医療チームを作って活動しています。またアセスメントチームを多職種で作り、支援が必要な避難所を見つけます。実際、主に支援に入った避難所は2ヶ所だった、とのことです。
OTとしてアセスメントチームに入り、避難所の評価・ニーズ発掘に関わったり、各種情報共有会議に出たり、本業である作業療法を行ったり、活動範囲は多岐に渡りました。どの活動も重要なものではありましたが、やはりOTとして専門を生かした活動ができたときには、達成感や充実感を得ることができた、とのことです。
実際に行った作業療法の例の一つは、集団体操です。機能レベルを以前より上げるというのは、災害医療においては(できるに越したことはないですが)優先順位は低く、この集団体操では被災前の活動レベルに戻す、ということを目標にしていました。避難所の限られたスペースで、不特定多数の方が生活している場所で、活発に動き回る、ということはなかなかできません。散歩や軽い運動などを自ら行うように促しても、「こんなにみんなが大変な時に、散歩なんてできない。」「周りの目線が気になる」などの理由で、活動量はどうしても減少してしまいます。そのため、専門職が集団体操の指揮をとり、それがきっかけ・理由となって、運動に参加してもらうように誘導しました。
このときだけは心配ごとを忘れてもらおう、と体操だけでなく、レクリエーションも実施しました。レクリエーションを通じて、避難者同士の交流もなされ、避難所内での人間関係の改善にも繋がりました。このような活動は、1回完結ではなく、繰り返し行うことで、前述のような良い結果をより生み出せる、とのことでした。
また、この団体の活動の特徴として、現地雇用メンバーに、サイコロジカルファーストエイド(Psychological First Aid、以下PFA)を推奨していました。WHOなどが作成したPFAのガイドラインには「被災者の尊厳、文化、能力を尊重したやり方で支援するための枠組みを示す・・・どのような言葉をかけ、どのような行動を取れば、最も支えとなるのかを考えるための資料」と書かれています。(WHOのガイドラインはこちらから各国言語でダウンロードできます→http://www.who.int/mental_health/publications/guide_field_workers/en/) アメリカのNational Center for PTSDなどが作成したPFAのガイドラインもあり、この日本語版が兵庫県こころのケアセンターのホームページからダウンロードできます。(http://www.j-hits.org/psychological/)
この熊本での活動で感じたのは、情報収集の大切さ、情報共有の難しさ、チームとしての協業性の重要性、などだったそうです。また現地で支援をしている地元の方も、支援を受けている人と同様に被災者であることも忘れてはいけない、と強く感じた場面もあったそうです。
以上のように、外国の団体ではありますが、現地雇用の人材を生かし、熊本で多くの支援をしていただきました。このような外国のNGOが日本に来る事ができるのは、そのNGOの活動を支える支援者がいるからであり、その遥か遠くの見えない支援者様たちにも感謝したいと思います。