2010年6月24日木曜日

セントルシアの要請



 今日もJOCVの要請について書きたいと思います。セントルシアの要請です。
 「現短期隊員はNCPDによる理学療法サービス立上げ支援の為に派遣された。経済的・地理的問題を抱える患者を対象に理学療法サービスの提供が開始されたが、配属先に医療の知見があるスタッフはおらず、サービスを継続する現地理学療法士の雇用を計画しているものの、予算・人材面共に難航を極めており、サービスを提供可能なのは同隊員のみである。これを受け、同隊員帰国後、サービスが途絶えることによる治療を受ける機会、継続的治療による機能改善の可能性が失われることを避けるため、本要請に至った。なお、今後配属先が確保予定の医療の知見のある人材と協働するとともに、リハビリ補助技術を有する人材に育成することも期待されている。
 NCPDはこの国の「全国障害者協議会」というものだそうです。JOCVの要請は「新規」となっていますが、短期ボランティアが先駆けて派遣されているみたいです。そして、これは日本だけで行っているプログラムではなく、ピースコー(アメリカの国際ボランティア活動機関・米国平和部隊=アメリカのJICAのようなもの?)の隊員と協力しながら行っているものです。ピースコー隊員は専門的知識はない、とのことです。そういう前提があって、内容について考えていきたい、と思います。
 率直に言うと、向こう見ずな案件だと思います。教育を受けたものが全くいない中で、新しい概念をたった一人で始めようとしています。例えると、私の病院に、中国から漢方医師がやってきて、全く漢方について無知な人々に、「今日から漢方外来を始めます」と言っているようなものです。この隊員も、現地の人々に「日本から来た若僧が、理学療法だの、リハビリテーションだの、聞きなれない活動は始めてるぞ。あれは一体なんなんだ?」となっていないだろうか・・・。
 全く新しい活動を、現地の人々に教育する前に、外国人が始めてしまっている例です。まさに「与えるだけの援助」に感じてなりません。マンパワーとしての活動も期待されているようですが、この案件では、2年間、まるまる教育に当てるべき案件なのかもしれません。一見、遠回りのようですが、実際はそれが近道だろうと思います。ただ、教育する前に、「これが理学療法だ」と、漠然としたイメージを持たせる意味があったのかもしれません。なんせ、今の隊員は短期隊員ですので。
 教育に全力を尽くすことで、患者さんの治療はストップしてしまいますが、今だけを考えるのではなく、これから先を考えると、目をつぶらなければいけません。JOCVが2年間に関わる患者数よりも、その後、教育された現地のスタッフが関わる患者数の方が圧倒的に多いのですから。教育が終わるまでの何年かは、障害を持って生きている人にとって利益はありませんが、不幸ではないと私は考えます。利益があるから幸せ、とは限らないからです。利益が不幸を招くこともあるからです。よって、今、障害を持って生きている人々には期待を持ってもらえれば良いし、将来の患者さんたちには利益を受けてほしい、そう思います。
 今回で、3件の要請について考察してきましたが、やや批判的になってしまいました。ただ、問題点を見つけ出して解決策を立てるには、批判的な立場から一つ一つ考察していくことも必要かと思います。この3件は、今回、JOCVに応募した際に希望した要請です。ちなみに、明日、1次試験の合格発表の日です。

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