2011年4月23日土曜日

マラリア

 マラリアには年間3~5億人が感染し、150~270万人が死亡していると推測されています。死亡症例のほとんどがサブサハラの5歳以下の小児ですが、東南アジアや南アジア、南太平洋諸島、中南米でも起こっている感染症です。病原体はウイルスではなく原虫で、蚊により媒介されます。蚊が人に吸血する際に唾液腺からマラリア原虫が体内に侵入するのです。
 血中に入ったマラリア原虫はまず肝細胞内に取り込まれ、そこで分裂・増殖します。ある程度数が増えると肝細胞を破壊し、再び血中に出て次に赤血球に侵入します。そして赤血球内で分裂・増殖し赤血球膜を破壊し、別の赤血球に再び入る、というサイクルを繰り返します。肝細胞内に休眠原虫といって、じっとしているだけの原虫が留まることがありますが、これは再発のリスクファクターとなります。破壊された赤血球は、血管内皮と結合する性質を持ち、これが脳症の原因であるとも言われている。
 初期症状は蚊に刺されてから7~9日後に現れます。発熱、倦怠感、頭痛、関節痛、筋肉痛で、時折、嘔気・嘔吐、下痢、腹痛も呈します。重症化すると脳症、腎症、肺水腫/ARDS、DIC様出血傾向、重症貧血、低血糖などが起こります。
 潜伏期間から考えて渡航後1週間以内に起こる発熱はマラリアではありませんが、マラリア流行地域では1週間以降に発熱があれば直ちに医師のところへ行く必要があります。
 急性期治療は、抗マラリア薬であるクロロキンを使用し、治療が成功すれば休眠原虫の駆除のためにプリマキンを使用します。クロロキンに対して耐性を持っているマラリア原虫もあり、その場合は別の薬剤が使用されます。どの種のマラリア原虫か(人に感染するマラリア原虫には4種類ある)を鑑別することは治療を行うにおいても重要なことのようです。ドミニカ共和国においては耐性を持ったマラリア原虫は確認されていない、とのことですが、多くの地域ではクロロキン耐性が出来上がっているようです。
 ドミニカ共和国に行く際に携行しているとよいものとして、CDCは以下のものを挙げています。

  1、普段から内服している薬
  2、抗マラリア薬
  3、市販の下痢止め薬
  4、ヨウ素剤、携帯式water filter(水の浄化のために)
  5、サングラス、日焼け止め(有害な紫外線から身を守るため)
  6、手指のアルコール消毒剤
  7、蚊に刺されないためのグッズ

 ドミニカ共和国は観光地も含む全域でマラリアのリスク地域なので抗マラリア薬が挙がっています。死亡例を含む副作用の危険から使ってはいけないとCDCが指定している抗マラリア薬も多くの国で販売されているようです。日本から持って行けるものなのか、現地で手に入れるものなのか、また訓練所のスタッフに聞いてみようと思います。

(参考資料)
http://idsc.nih.go.jp/idwr/kansen/k05/k05_04/k05_04.html
http://wwwnc.cdc.gov/travel/destinations/dominican-republic.aspx
http://wwwnc.cdc.gov/travel/yellowbook/2010/chapter-2/malaria.aspx

(世界マラリアの日:2011年4月25日)
http://www.worldmalariaday.org/home_en.cfm
http://www.rollbackmalaria.org/worldmalariaday/

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