2013年12月8日日曜日

青年海外協力隊に医師!?

年二回募集が行われる青年海外協力隊(以下、JOCV)ですが、今回の秋募集で医師の要請が出ているのを見つけました。医師の要請は非常に稀で、要請を出したとしても応募する人はいつもいないのが現状です。今回の募集にも誰一人応募していないようですので、医師のJOCVは今回も生まれなさそうです。
 JOCVは国際協力への市民参加という枠組みで、自らの経験や能力を途上国の人々のために活かしたい、と望む人材を必要とされている国・地域に派遣する事業です。派遣されてから、どのような活動を行うのかは、比較的、派遣された本人に任されているところが大きく、自ら現地で生活しながら問題点を見つけて、その解決策を探っていきます。
 しかし、自由度が高いからと言って、なんでも許されるわけではないのが、医療系職種です。日本で取得した免許も、海外ではほとんど無効で、医療行為を行うには特別に現地政府に許可を得る必要があります。そのため医療行為はJOCVには禁止されているのが現状です。
 医師は診断・治療という医療行為を行うことを業としているので、医師がJOCVとして派遣される、というのには非常に違和感があります。要請内容を見ると、リハビリテーション病院の医師への教育がメインになっています。具体的にどのような教育が、現地のリハビリテーション科医師に必要なのか、考えてた上での要請かどうかは疑問ですが、最終的には機能的予後を見極めて、必要な治療を処方できる医師を育てたいようです。
 はたして、それができる医師が日本にいるでしょうか? それもJICAのホームページを見て、自らこの要請を見つけだしたり、事前に語学試験を自分で申し込んで受けたり、たくさんの書類を書いたりして応募する暇のある医者が日本にいるでしょうか? そして、20歳くらいの新卒の何も経験も資格もない人たちとも同等の待遇で二年間も途上国で生活できる医師がいるでしょうか?
 PTさんやOTさんなら分かると思いますが、いろいろな診療科がある中でリハビリテーション科を選んだ医師というのは、いろいろは事情を抱えていることが多いです。非常に優秀な医師がいるのも確かですが、大多数の医師は理学療法や作業療法をきちんと知っていないでしょう。
 そもそもPTやOTでさえ、自分が何をやればいいのか分からなくなっている時代です。医師を途上国に派遣することが、問題解決になるとは到底思えない、というのが私の意見です。要請内容に問題点として「処方の仕方が医師によって統一されていない」、「個々の患者に合った内容ではない」、「患者評価ができない」、「漫然とリハビリを続けている」などと書かれていますが、同じ問題を抱えた日本から医師を送っても、改善のためのノウハウがないのですから、妥当な要請とは考えづらいです。
 これが皮肉にも私が活動していたドミニカ共和国からの要請であり、私がもし活動中だったら断固反対しただろうと思います。もちろんいろいろ熟考した結果の要請ではあるのでしょうが、関係者にも「分かってるんだよ、そんなこと」と思うもしれませんが、この記事を読んでいただきたいと思います。

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