技術は進歩し装具や補助具の大量生産ができるようになりましたが、既製のサイズだけでは個別のニーズに応えられないことが多いです。
ニューヨークにあるAdaptive Design Associationは国際的なヘルスケア団体とチームを組み、不要になった段ボールを使った補助具の作成に取りかかりました。
このプロジェクトのチームにはWCPT、グラスゴー・カレドニア大学、WCOTが入っています。世界中の障害を持つ子供や大人、機能低下のある人が自由に動けたり、自立した生活ができるようになるのが目標です。
グラスゴー・カレドニア大学のTracey Howeは「私たちが大事だと考えていることがあります。それは一人として同じ人はいないと言うことです。ニーズもみな違います。置かれている環境もみな異なります。しかし、市販されているものはフリーサイズのことが多いです。」と述べています。
理学療法士のHoweが最初にADAを知ったのは2016年にウインストン・チャーチル奨学制度でニューヨークにいた時でした。Alex Truesdellを中心に1998年からオーダーメイドの補助具を作ってきました。
Adaptive Design Globalではデザイナーがあらゆる形やサイズのシーティング装置や脊柱サポーターなどを作ります。
「このプロジェクトの素晴らしい点はオーダーメイドであるという事です。人が中心であり、チームで作られます。チームとは家族や教師、セラピストであり、何が実現可能か、何をしたいか、などを考えながら作製します。
WCPTのEmma Stokes会長はこのプロジェクトを歓迎しています。「WCPTがこのプロジェクトに関わることができるのは非常に嬉しいです。この分野に理学療法士は多いに貢献できるでしょう。」と言っています。
「プロジェクトは国際団体が掲げる使命や目的を果たすものです。この高度な新たな取り組み、未来を見据えた取り組みは世界中の関係職種に影響を与えるでしょう。」
グラスゴー・カレドニア大学で理学療法学科を取りまとめているFiona Moffattはオーダーメイドの良さの例を挙げました。「例えば脳性麻痺の子供のために作られた車いす用のテーブルがありますが、既製品では上肢の緊張が高く、腕が外に飛び出してしまいます。そこで腕が納まるように横に窪みを作り、腕が落ちないようにしました。簡単な工夫です。しかし、これは市販のものではできない、オーダーメイドならでは事例です。」
ADAは段ボールの補助具を作ることですでに大きな成功をしています。セラピストとデザイナーが作ってきた製品は毎日の使用にも10年以上耐えています。プラスチックやアルミニウム製に比べて、段ボール製の方がより快適でかつ涼しく、軽いです。またリサイクルもできます。
「今や、どこを見ても段ボールがあります。みんな街で段ボールを見かけたら写真を撮って送ってきてくれます。」とHoweは言っています。
今はまだ挑戦の途中です。今年の初めにADGは100万ドルの支援をMacArthur基金から得るために、他の2000のプロジェクトと競争しました。
この戦いには敗れましたが、チームの野望が薄らぐことはありませんでした。補助具をオーダーメイドすることの秘めたる可能性を広く認識してもらうために、Howeは教育プログラムを改変し、世界中に広がるようにしようと考えています。
「毎年、非常に多くのセラピストがオーダーメイド補助具の重要性に気がついてくれました。世界中に広まるまでには、まだまだ時間がかかるかもしれませんが、今までに10万人ほどのセラピストが新たに賛同してくれました。
私たちは、各大陸にスペシャリストを置いたハブを作りたいと思っています。たとえ小さな村であっても、段ボール補助具を作ることは可能でしょう。しかし、どんなに優れた職人がいても、段ボールを使って補助具を作製するという発想はないでしょう。」と彼女は話しました。
私たちは、各大陸にスペシャリストを置いたハブを作りたいと思っています。たとえ小さな村であっても、段ボール補助具を作ることは可能でしょう。しかし、どんなに優れた職人がいても、段ボールを使って補助具を作製するという発想はないでしょう。」と彼女は話しました。
【使われていた英語表現】
・back
(動詞)支援する、支持する
・cardboard
段ボール
・adaptive
適応性のある
・one-size-fits-all
フリーサイズ
・overlook
見落とす
・identical
同一の、全く同じ
・under the leadership of
~の指揮のもとで
・cascade down to
~に段階的に伝わる、流れる
・offer an example
例を挙げる
・tray
車イス用のテーブル
・gutter
溝
・custom-made
オーダーメイドの
※order-madeとするのは誤り。
・in contrast to
~と比べて
・one of scale
いくつかの段階の内の1つ
・compete with ~ for ~
~を得るために~と競う
・bid
企て、努力
・undimmed
dimmed(薄らぐ)に否定のunが付いている
・provision
用意、食糧
・thousands of
何千の、(概数的に)非常に多くの
・awareness
気付くこと
※英英辞典にはknowing that sth exists and is important、つまり「大切だと気付くこと」
【リンク】
・原文
http://www.wcpt.org/news/adaptivedesign
・Adaptive Design Assosiation
http://www.adaptivedesign.org/
【リンク】
・原文
http://www.wcpt.org/news/adaptivedesign
・Adaptive Design Assosiation
http://www.adaptivedesign.org/
【あとがき】
久しぶりのニュース更新でした。段ボールを使った補助具の作製についてでした。段ボールと言えば思い出すのが、熊本地震のときに避難所で使われていた段ボールベッドです。非常に軽く、しかし十分な耐久性があり大活躍でした。
ADAのウェブサイトで見られる動画や写真には、段ボールで作った椅子や階段などの実例が写っています。一度ご覧になるとイメージが湧くと思います。
各種研修コースも開催しているようです。ニューヨークに来いと書いていますが、日本に来てくれないでしょうかね? 招致しましょうか?