2019年10月14日月曜日

【書籍】CBR 地域に根ざしたリハビリテーション 障害のある人の完全参加を目指すシステムづくり

地域に根ざしたリハビリテーション(Commuinity-based Rehabilitation, CBR)という言葉をご存じでしょうか? この考え方は古く、1950年台から発展途上地域で始まっていまして、1970年台には世界保健機関(WHO)が最も重要な施策の一つと位置付けています。私は、国際協力がしたくて理学療法士になったものですから、学生時代からこの言葉は知っていましたが、学校では一切教わりませんでした。現在も一部の学校・大学を除いては教えてはいないでしょう。国家試験には出ませんし、日本の法律の中で働くに当たっては必要ないかもしれません。

CBRに関してはWHOのウェブサイトに情報があります(こちらをクリック→https://www.who.int/disabilities/cbr/en/)。WHO Global Disability Action Plan 2014-2021にはCBRを推進していくことが目標に掲げられています。CBRガイドラインはJANNETによる日本語訳が公開されています(こちらをクリック→https://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/intl/un/CBR_guide/index.html)。

話は脱線しますが、Community Based RehabilitationではなくCommunity-based Rehabilitationです。英文法の話ですが、Community-basedでひとまとまりの形容詞です。後ろに続く名詞Rehabilitationを修飾している形です。なので読むときもCommunity-basedはひとまとまりで読み、basedにはアクセントを置かないようにします。

様々な資料や文献があり、学生時代から情報を集めてきた私ですが、このCBRについて、いまいち理解が深まっていませんでした。なんだか当たり前のことを難しく言っているだけのような気がしていました。

どういう事かというと、CBRは「①障害のある人が心身の能力を最大限にし、②様々なサービスを受けられ、③社会やコミュニティーに参加できるようにすること。これは④障害のある全ての人に対する国の行動計画である。」と説明されます。日本のPTやOTにこのことを話しても、単なる既知の事実で、ありがたい話でもなんでもありません。私がドミニカ共和国で青年海外協力隊として活動していた時も、障害者に着目するのではなく、技術移転に重きを置いていたので、CBRについて考えることはありませんでした。

しかし、今年2019年4月にモザンビークに派遣された時、副団長から「理学療法士がいるのでCBRもできたらやりたい」と言って頂き、それから、災害時におけるCBR活動についてずっと考えています。

そこで、また資料集めや勉強をしているのですが、先日手に入れた本が、この『CBR 地域に根ざしたリハビリテーション 障害のある人の完全参加を目指すシステムづくり』です。おそらくもう中古でしか手に入らないかもしれません。私も中古で買いました。中古だと価格が高騰している場合が多く、安く出品されていないか定期的にチェックして購入することをお勧めします。私は一桁間違っているんじゃないか、という安さで購入できました。

やっとここから書籍紹介になりますが、著者のMalcolm Peat氏はPTで大学で教鞭を取ったり、WHOの仕事にも従事されていた方です。JICAとのCBRプロジェクトの際に来日し講演もされています。

この本の中では、障害とは何か、コミュニティーとは何か、目標を達成するにはどうすればよいか、教育、経済の視点ではどのように考えればよいか、などが書かれています。翻訳本のため、日本語は読みにくく、スラスラとは読み進めていけませんが、中身の詰まった内容の本です。CBR研究についても書かれており、実践のみならず、研究の重要性も説いています。

紛争地におけるCBRについては記載がありましたが、災害におけるCBRについての記載はありませんでした。これはCBRガイドラインの補足にすこし触れられています。

もっと手元の資料や頭の中を整理し、災害時にできるCBR活動について考えを深めていきたいと思います。

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