2020年11月1日日曜日

災害時の作業療法


先日、大阪にあります専門学校の作業療法学科2年生を対象に、災害時のリハビリテーションについて講演させていただきました。日本と外国(特に途上国)のリハビリテーション事情を比較し、災害時に作業療法士が医療支援において何をすべきなのか、お話しました。

災害時に緊急医療チーム(Emergency Medical Team, EMT)に必要とされるリハビリテーション専門職には以下の職種がWHOのマニュアルに挙げられています。

 ・リハビリテーション専門医(Physiatrist)
 ・リハビリテーション専門看護師
 ・理学療法士
 ・作業療法士

リハビリテーションのSpecialized Care Teamの認証基準として「最低一人の理学療法士とその他のリハビリテーション専門職による多職種チーム」であることが求められることから、どうしても理学療法士の活動が注目されやすいです。災害時の医療支援って言っても理学療法士がメインでしょ? って思われがちです。しかし、普段の臨床と同様に作業療法士も重要な役割を持っています。

WHOのマニュアルによると、次の疾患に対応できる必要があります。

 ・骨折(創外固定・牽引を含む)
 ・切断
 ・末梢神経損傷
 ・熱傷(移植・皮弁術後)
 ・外傷性脳損傷
 ・脊髄損傷

また,次の技術を有していることが求められます。

 ・基本的なスプリント作成
 ・補助具,装具のフィッティング,使用訓練
 ・ポジショニング,早期離床
 ・患者および介護者へのADL指導
 ・心理社会的サポート(心理的応急処置)
 ・呼吸器ケア(排痰法)

これらを見てどうでしょうか? どれも作業療法士が普段の臨床でも遭遇する疾患や、使っている技術ではないでしょうか? 

作業療法士は理学療法士よりも養成校での授業時間は長いです。それは精神科の授業や実習が作業療法学科では含まれるからです。つまり、精神科領域では理学療法士は教育をほとんど受けていないため、作業療法士には敵いません。

また、上肢のスプリントや義肢に関しても作業療法士の専門です。外傷や感電等で上肢切断の患者が来たり、手の外科後や末梢神経損傷患者へのスプリント作成も作業療法士の専門です。

作業療法士の「作業」という言葉はoccupationを訳したもので、単なる作業(work)ではありません。作業とは「人の心を"occupy=満たす"もの」を指し、災害によって、ぽっかりと穴が空いた被災者の心を、様々な方法で支援することに長けています。心理社会的サポートに関しても理学療法士よりも上手なはずです。

しっかり役割分担して、多角的な視点でリハビリテーションを提供できるよう、理学療法士と作業療法士がタッグを組んで活動できるチームができたらいいな、と思います。いつかWHOのリハビリテーションSpecialized Care Teamに認証されるチームを作りたいです。

(参考)
世界作業療法士連盟が作成した災害マネジメントに関するオンラインコースがあります。作業療法士のために作られた唯一のコースです。コースレビューもありますので、参考にどうぞ。
 ↓

0 件のコメント:

コメントを投稿