2010年9月17日金曜日

第25回日本国際保健医療学会学術大会 2

 学会2日目は、国際保健、特に災害支援活動の分野でのリハビリテーション職種の役割、について考える自由集会に参加してきました。JOCVリハビリテーションネットワークと日本CBRネットワークの共催で、パキスタン北部で起きた地震災害の際に現地で活動した理学療法士および作業療法士の方々からの報告がありました。
 災害直後の現場の過酷さが非常に伝わってきました。最初の活動は、やはりPT・OTのことではなく、運ばれてきた人、特に子供の清潔保持や食事の提供などのお手伝いだったそうです。日本の病院とは違い、入院患者であっても、食事や着替えなど身の回りのことは家族が行う、というシステムなので、重症な子供が単身、ヘリで拠点病院に運ばれてくることもあり、家族と離ればなれになった場合の支援をボランティアが行う必要があったようです。
 災害直後の混乱がある程度、落ち着くと、PT・OTとしての活動を行っておられました。PTとしては脊損患者へのROM ex.や動作訓練、その他患者教育や医療スタッフ教育などです。OTでは車椅子での調理訓練や外出訓練、家屋改造、レクリエーションなどです。
 ここで一つの疑問が沸きました。パキスタンの文化的背景が最初に紹介されました。その中で、女性はほとんど外出することはなく、外出するときは全身を覆う衣装(二カーブ、ブルカ、チャーダル)をする、という事。そして思春期になると外出することは滅多にない、という事が紹介されました。町中どこを見ても男性ばかりで、女性用の衣服を販売している店の店員も、それを買いにくる人も皆、男性だ、ということでした。
 外出訓練の目的はおそらく、「障害があっても、工夫すれば外に出ることができるんだよ」「車椅子ではこうすると段差を乗り越えられるよ」「松葉杖ではこういうところを気をつけましょうね」「部屋にこもってばかりじゃ元気がでないよ」、と言ったところでしょうか。倒壊した建物の中には、前述の文化的背景のために女性が多く、したがって障害を受け、PT・OTの対象になった方の2/3は女性だった、との報告もありました。
 対象者(多くは女性)に外出訓練を行った、という事ですが、それが果たして現地の習慣と逆行していなかったのか?
 援助、支援さえすればみな幸せ、ではない、という事をさまざまな例でこれまで聞いてきたことがあります。考慮しなければいけないのは、現地のルール(文化、風習、宗教など)だと思います。きっと、活動報告で外出訓練について「失敗した」「うまくいかなった」という話はなかったので、最大限考慮して活動されたのだと思います。なので、その辺りをもう少し詳しく、お聞きできたら、と思いました。(が、質問はまた次に会った時に、と思い他の参加者に発言を譲りました)
 非常に興味深い話ばかりで感動しました。目標にすべき人が大勢いることが幸せです。

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