2011年10月17日月曜日

ボランティア活動報告書(1号)

 JICAボランティアは2年間の派遣中に5回の報告書を書くことが命ぜられています。派遣3か月の時点での活動報告書が承認されましたので、公開したいと思います。この報告書はJICAにより一般に公開されますので、過去の様々な職種の活動を報告書を通して知る事ができます。主に東京・広尾にあるJICA地球ひろばに所蔵されています。

________以下活動報告書________

<要約>

 任国派遣3か月、任地派遣2か月時点での報告書。首都同様、比較的栄えた都市にて生活しており、日常生活での不便はほとんど感じない。配属先のNGOが経営する病院には、多くの患者が来院し、現地スタッフは日々忙しく働いている。長年のボランティア派遣実績があり、ボランティアにとっては働きやすい環境が最初から整っていると感じる。現地スタッフの技術レベルは非常に低く、患者に害を与えていることの方が多いが、みな一所懸命に働いているように思われる。カウンターパートは現地スタッフの技術および知識の向上のため、ボランティアに技術指導や講義等を望んでおり、現在までに1度、全療法士を対象にした勉強会を実施した。

<1、活動地域及び配属先の概要>

1)活動地域概要、抱える問題点
 活動地域は首都からバスで2時間ほどのサンティアゴ。大型スーパーがホームステイ先から徒歩圏内に4つあり、日本のホームセンターのような店や、家電量販店のような店も他に存在し、特殊な日本の食材以外は比較的手に入る。車の交通量が非常に多く、歩行者よりも車優先の交通事情故、道路の横断には注意が必要である。ホームステイ先が中心街であることから、車のクラクションや音楽などの騒音が大きいが、徒歩圏内で全ての用事が済ませられることに非常に利便性を感じている。
 道路は舗装されているが、穴が空いていたり、マンホールが盗まれていたり、鉄の棒が地面から出ていたりしており、車だけでなく足元も注意して歩かないと地面には危険が多く潜んでいる。そのため障害者には決して移動しやすい環境ではなく、人の助けが多く必要である。

2)配属先の事業内容、組織体制
 配属先名称はPatronato Cibao de Rehabilitación, Inc.で、1967年12月に設立された現地NGO団体。あらゆる年齢、疾患の患者に「物理医学とリハビリテーション(PM&R:physical medicine and rehabilitation)」を提供することを目的としており、理学療法・作業療法・言語療法・義肢装具作成室・医療相談室などがある。

3)配属先の援助受け入れ実績
 理学療法士 1998年から6代目
 作業療法士 1995年から4代目
 義肢装具士 2008年から2代目

<2、ボランティアが所属する部局の概要>

1)ボランティアが所属する部局の事業内容及び課題
 理学療法は成人中枢疾患部門、小児疾患部門、整形疾患(手を除く)部門、手の外科疾患部門に分かれており、整形疾患部門は男性用と女性用が分かれている。現地スタッフはそれぞれ特定の部門に従事しているが、ボランティアは全部門を広く見渡す立場にいる。

2)同僚の人数および技術レベル
 理学療法に従事しているスタッフは15人。技術レベルはみな同じではないにしろ、概して非常に低いレベルである。適応・禁忌の知識がない状態で、医師の処方通りに流れ作業のように理学療法を行っている事から、禁忌が平然と行われている状況である。また現病歴や病態を把握しようとしていないし、カルテがないことから正確に把握することが困難である。技術向上の意欲があるスタッフが少ないながらも存在するが、多くは自身のやり方に(現地人同士であっても)口出しされたくない様子である。

<3、配属先のニーズ>

1)ボランティアに対して期待している内容
 急性期患者への理学療法提供、運動療法技術の向上、歩行評価法の獲得、チーム医療がカウンターパートより要求されている。そのためにセミナーや実技練習会の実施を依頼され、9月16日に1度ボランティアより勉強会(テーマ:拘縮)を全理学療法士に対して行った。

2)当初要請時のニーズからも変更点
 カウンターパートとしてはニーズの変更は現時点ではないが、ボランティアとしては急性期患者への理学療法提供は、危険とトラブルを秘めていると感じ、積極的に進めたいとは思っていない。

<4、活動計画準備状況>

 現在、治療に難渋している患者がいればボランティアが呼び出されるシステムになっている。しかし、呼び出してくるスタッフは限定されており、関わりのないスタッフも多くいる。現地スタッフの技術と知識の向上のためには、非常に多くの指導を必要とし、現実的ではないので、患者に害を与える行為は何かを教え、その行為を止めさせることができれば、今より治療成績は上がると考える。そのために勉強会を定期的に行ったり、患者を治療しながら教えることを続けていきたい。
 また、11月にコスタリカで行われるセミナーに、当院に派遣されている理学療法士と作業療法士と義肢装具士のボランティア3名と、それぞれのカウンターパート3名が、ともに参加を計画し、共通した知識・技術を得ることで、今後のチーム医療が発展していくことを願う。

<5、受け入れ国の印象>

 交通事情(道路の悪さ、交通マナーの悪さ、交通量の多さ、信号機の故障など)や治安の悪さ(一般人の拳銃所持、殺人事件、強盗など)、電気・水事情(停電、断水)などは、訓練所で事前に聞かされ、日本にいる間に驚かされたので、現地に到着してから改めて驚くことはなかった。治安に関して、悪いニュースばかり聞かされていたが、温厚で明るい性格のドミニカ人と楽しい時間を過ごすことができている。

________以上________

 これは9月末に書いた報告書ですが、現在は、他の関連施設との連携をいかに取っていくか、コスタリカの研修をいかに今後に活かすかを考えています。また、首都に理学療法士と義肢装具士、私のいるサンティアゴに作業療法士のボランティアが増える予定なので、今後、理学療法士・作業療法士・義肢装具士・養護のボランティア間の連携も目指したいと考えています。
 このボランティア間の連携は、算数指導能力向上プロジェクトの隊員の話などを参考にしようと思っています。彼らは週1回、午前中に集まって会議を開いています。いい点はどんどん参考にさせてもらい計画を練っていこうと思います。

4 件のコメント:

  1. みんなに見てもらいたかったのでFacebook,Twitterで記事を紹介させて頂きました。

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  2. KENJIさん
    大変ありがとうございます。より多くの人に読んでいただける事が小生の喜びであります。

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  3. 非常にわかりやすい報告書やね。素人の私にもなんとなくわかるよぉ。人間関係、特に信頼関係をつくることの難しさを実感するねぇ。転勤先の若い先生方の育て方の話を今日、教頭としていた。教育の現場でも、求めてくる若手が少なくなったなあと実感するというのが結論。長い目で、見ていこうかなと思っている。

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  4. katabira no tsujiさん
    一般公開されるものなので、専門的な話だけでなく、ドミニカ共和国の一般的な内容も含んでいます。分かりやすいと言ってもらえて安心しました。
    こっちも求めてくる人は少ないです。ゼロではないのが救いですが、求めてくる人でも、興味や意欲が持続しないのが残念なところです。すぐに諦めてしまいます。

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