2012年6月2日土曜日

周囲の安全確認

 先日、JICA事務所で、ボランティアによる中間・最終報告会と、現地警察官(安全対策クラーク)および大使館の安全対策官による安全対策連絡協議会がありました。報告会は年に4回、安全対策連絡協議会は年に2回、実施されています。
 安全対策連絡協議会では、最近の犯罪手口やその対処法などが紹介されました。その話の中でこういう内容がありました; 「道で倒れている人がいたら、近づいてはいけない」。私は最初、理解ができませんでした。傷病者を発見したら、自分の持つ知識・技術を総動員してファーストエイドに当たらないといけないと考えていました。意識がない、呼吸がないなど、重体の場合は救命処置を行い、人命救助を行うことがバイスタンダーの責務だと思っていました。それなのに、なぜ?? なぜ救命活動を行ってはいけないの?? 派遣前訓練や派遣後のセミナーでBLS(一次救命処置)を、JICAは私たちに学ばせていたのに!?!? 私は医療従事者として、苦しんでいる人を見て見ぬ振りすることはできない、と思い、モヤモヤしながら話を聞いていました。
 日本にいる時に、私は外部のBLSの研修を何度か受けていました。ダイビングのストレス&レスキューコースでも再び学んだり、前述のように派遣前訓練やドミニカ共和国でも学びました。傷病者がいたら、意識の確認をし、呼吸の有無を確認、呼吸がなければ次は・・・、など繰り返し訓練してきたのに、「傷病者には近づくな」と言われると、これまで学んだ事はなんだったんだ、となってしまいます。
 けど、私が忘れていたのは「ここはドミニカ共和国」という事と、救急活動で最優先すべきは「自分自身の安全」という事でした。この国の最近の犯罪で、傷病者を装った強盗事件があったそうです。銃の所有が認められている国であるので、銃による傷害事件や殺人事件も頻発しています。傷病者を発見したときに最初にすべき「周囲の安全確認」がこの国では難しく、傷病者に安易に近づくと危険なことが起こりうるのです。例えば、傷病者が麻薬犯罪の関係者で、あるトラブルから銃で撃たれた、という事件があったとすると、不用意にその被害者に近づいた者は、仲間か何かに勘違いされ、同じように銃で撃たれる可能性もあるのです。日本では周囲の安全確認と言えば有毒ガスの有無や、落下物のある可能性など、周囲の「物」に関する安全確認のみで良いと思いますが、ドミニカ共和国では周囲の「人」および傷病者の中に危険な人がいないかの確認が必要です。これは、目の前で卒倒するなど、状況がはっきりしている場合でなければ困難です。
 人が倒れていてもすぐに駆け寄れないのは、治安の悪い国では、自身の安全のためには仕方がないことです。救える命があったとしても、状況不明の場合なら、その場から離れることが正しい選択だと思います。
 治安と救命率を比較検討した研究があるのか、気になるところです。新たな興味が生まれた一日でした。

4 件のコメント:

  1. なるほど。アフリカでは、麻薬云々の関係はあまりないようなので、倒れている人がいれば、周囲の人はどどっと集まるやろうなあ。治安には十分気をつけて、貴重な時間を過ごして欲しいね。

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    1. 麻薬関連の話も聞きますが、一番多いのは些細な喧嘩がきっかけの殺人らしいです。普段は温厚で陽気な人たちなのですが・・・。
      こっちも実際は、倒れている人がいれば人だかりができます。群衆の中に入るのも危険なので禁じられています。
      ただ油断や不注意が原因で事件に巻き込まれることがほとんどなので、常に気を付けながら、一日一日を大切にしていきたいです。

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  2. 難しい立場ですよね。
    とにかく、十分気をつけて活動に励んでください。

    *学習発表会で声かけようと思いながら、いつの間にか、はぐれちゃいました。残念。T_T

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    1. コメントありがとうございます。
      2年3年くらいの短期で来ている日本人は、ここに長年住んでいる人に比べて自分を守る術が未熟ですから、気をつけて過ごします。
      学習発表会お疲れ様でした。楽しかったですね。

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