2011年2月22日火曜日

ミャンマー

 先日、ミャンマーの理学療法士(PT)さん5人と交流する機会がありました。彼らは、「ミャンマー理学療法士協会」の設立を目指している選ばれし者です。1か月ほど日本に滞在し、講義や見学を通して、PTに必要な概念や評価法、また診療録の書き方などを習ってきたそうです。その総まとめの日にお邪魔しました。今日は、その時に得たミャンマーの現地の人の声による貴重な情報を紹介したいと思います。
 <ミャンマーの理学療法士の育成について>
 4年生の大学で勉強することが必須だそうです。理学療法を勉強するには国立の大学しかないそうで、年に1度ある全国統一試験での成績によって理学療法学部に入れるかどうかが決まります。成績順で「あなたはこの学部に入れます」と割り振られるからです。一番は医学部、その次は薬学部、そしてその次あたりに理学療法学部があるそうです。看護学部は理学療法学部よりやや下とのこと。海外でPTの免許を取得した人は聞いたことがないそうです。もし、そのような人がいれば、おそらくミャンマーには戻って来ないだろう、と言っていました。
 <ミャンマーの理学療法事情>
 日本と同じで、ミャンマーでもPTが対象とする症状で一番多いものは「痛み」だそうです。それに対して行われていることは物理療法で、徒手治療はやっていないとのことです。物理療法を行っていき、痛みが軽減してきたころ、関節可動域運動などの運動療法が行われると言っていました。徒手治療はほとんど行っていないのは習っていないからなのか、関節運動学的アプローチarthrokinematic aproach(AKA)という言葉は初耳だったそうです。日本で開発されたAKAの一つにHakata methodという物があることを紹介しておきました。AKAについてはまだ知らないミャンマーのPTですが、Physical Medicine and Rehabilitationという言葉を知っていました。日本では後者(Rehabilitation)のみが輸入されてきましたので、Physical Medicineも知っているミャンマーのPTの方が未来は明るいような気がしました。
 <ミャンマーの家族事情>
 ミャンマーでは大家族が多いそうです。一人暮らしは非常に稀で、退院に際しては介助者が必ずいます。誰かが病気になれば、遠方からでも親戚や知人が大勢お見舞いにやってくるそうです。笑い話で、「病人が出れば、その家はパーティー騒ぎだ」と言っていました。病院でパーティー騒ぎされないように、「お見舞いは1度に1人」という立て看板が置かれているそうです。お見舞いに行かないと、その後の関係が悪くなるそうで、どうしても行けない場合は誰かにお見舞いの品を託して後日訪れるのだそうです。だから、出勤前に「これを○○氏のところへ届けてくれないか」と頼まれることは日常茶飯事だと言っていました。
 <ミャンマーの障害児事情>
 子供が障害を受けると親が付きっ切りで介護します。学校へ行ける場合は、親も同行して学校生活を援助するのだそうです。しかし、車いす生活になった子供の場合、道路が非常に悪いので通学が困難になります。さらに、車いすになってまで学校に行かなくてもいい、という考えが親にも子供にも現れることから、通学しなくなるそうです。松葉杖で歩ける子供なら通学している例もある、とのことでした。
 たった1日だけの交流でしたが、快く歓迎してくれたミャンマーの理学療法士の方々に感謝でした。また、非常に熱心に取り組まれている姿を見て、日本も負けていられないぞ、と思いました。ミャンマーには青年海外協力隊が派遣されていないそうです。いつか、ミャンマーも訪れたいと思います。

2 件のコメント:

  1. アウン・サン・スーチーさんの件で、日本では評判の悪いミャンマーだが、民衆はバゴダ(仏塔)を作ることを競うような仏教国で、良き家族主義が生きている国。Lily君の家族事情のコメントで良くわかる。グローバリゼーションの弊害の一つは、こういう良き伝統の崩壊です。いかに市場を飼いならして、拝金主義を排するか、さらに真の幸福とは何かという視点だと思うねえ。

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  2. katabira no tsujiさん
    今回出会ったミャンマーの方々は、ミャンマー理学療法士協会を作ろうと夢にあふれ、熱心に楽しそうに学んでいました。ポールコリアーが失敗国家に挙げたミャンマーから来たとは思えません。夢を持つことができる国が増える=紛争のない安心できる世界になる。前者と後者、どちらが先に訪れるでしょう。両者が達成しても伝統が崩壊してしまわない政策も必要ですね。

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