2011年8月19日金曜日

実務経験


派遣前に勤めていた病院です

 青年海外協力隊には実に様々な職種があります。私のような医療系もあれば、農業系、スポーツ系、開発系、教育系、芸術系などに分類できます。医療系や教育系などでは、指定された免許や資格が必要な場合が多いですが、特に特殊な技能がなくても応募できる職種もあり、幅広い人にチャンスがあります。また、実務経験が必須条件のものもありますが、新卒の方でも応募できるものもあります。
 理学療法士の場合は、私が応募した時は、「理学療法士免許」「実務経験3年/5年」が必須で、さらに中には「小児の経験」「男性のみ」などの条件があるものもありました。理学療法士で応募する際に必須である「実務経験」について、私の経験から少し書かせて頂こうと思います。

*この記事は、一つ前の記事のコメント欄でいただいたMIDORIさんの質問に答える形で書いています。私の未熟な経験を元に、感じたままに書いています。勝手な想像も幾分か含まれています。決して一般論ではないので参考程度にご覧ください。

 実務経験は同時に社会経験も含みます。理学療法士としての「実務経験」と、社会人としての「社会経験」に分けて考えます。
  「実務経験」
 私が就職したのは急性期患者を扱う大学病院です。大学附属の病院が3つあり、どれも手術を行う急性期病院です。平均在院日数も少なく、次々に新しい患者が入院してきます。また、一般病院ではあまり見ない難しい病気の患者を担当することもありますし、非常に重症な患者もいます。反対に脳卒中や糖尿病、骨折などの一般的な病気の患者も担当します。非常に幅広い疾患を数多く経験できた、という意味では大学病院での4年間は現在に活かされているプラスの面です。
 急性期を脱して、回復期へ移行した患者は近隣の病院へ転院します。医師の紹介状、看護師の看護サマリー、理学療法士などの情報提供書を持って別の病院に行った後は、ほとんどの場合、経過は追えなくなります。自分の担当していた患者さんのその後は、患者さん自身が知らせに来てくれる場合を除き、不明のまま終了します。附属病院に回復期や維持期を持たない私の勤めていた病院の「実務経験」としてのマイナス点だと思います。
 ですので、国際協力を目指す・目指さない、いずれにしても、急性期から維持期までを同一組織内で見ることのできる病院に就職し、幅広い疾患の、幅広い時期の患者をみることができればいいと思います。しかし、理学療法士も就職先を選ぼうとすると就職難を実感する職種になってきています。このような都合の良い病院は見つからない可能性が高いです。その場合は、できるだけ急性期病院を選んだ方がいいと思います。急性期病院でリスク管理がきちんとできる理学療法士になった方が、開発途上国の病院で働く際には助けにきっとなります。なぜなら、診断もはっきりしない患者が多かったり、運動が人体に与える影響をしらない医師が処方箋を書いたり、緊急時の対応ができないスタッフの中で働いたりするからです。
  「社会経験」
 実習生の中には、「挨拶ができない」「無断欠席」「提出期限を守らない」「きちんとした日本語でレポートが書けない」「できない事から逃げようとする」「怒られると意欲を失う」など、社会人適正に欠ける人が多くいます。こういう人は社会に出て徹底的に矯正されるか、はじき出されるかだと思います。働き始めても1年毎に病院を変わっている、もっと悪いのは数か月で退職してしまう人は、開発途上国で2年なんて活動できるはずがありません。「実務経験3年以上」とあれば「勤続期間3年以上」と読み替えてもいいと思います。
 ただ、どのような所で社会人経験を積めばよいのか? できるだけ大きな組織に属して欲しいと思います。縦社会の中で、いかに自分の意見を主張するか。上の人とバトルするのも良いです。相手を怒らせると本性を見ることができます。本当に能力のある人間は、若者が食ってかかっても怒りません。逆に食ってかかったことが恥ずかしく思うくらい上手にあしらわれます。そんな経験も非常に重要だと思います。また医療職はプライドの高い人たちが多いので、そのプライドを守りつつ、相手の考えを変えさせる術も学んでいくべきです。私の尊敬する先生が「相手を変えるには、まず自分を変えること」と言っていました。簡単なことではありません。しかし、理学療法士である前に一人の人間として成長すべき期間として働いていただければと思います。

 まとめると、急性期から維持期まで一貫して患者をみられる、比較的大きな組織に就職し、理学療法士としての知識・技術だけでなく、社会人として成長することが大切だと思います。
 そして理学療法士としての知識・技術は、多く知っているに越したことはないですが、重要なのは基礎です。基礎とは、解剖学、生理学、運動学などの基礎の基礎から、理学療法の3本柱「運動療法・物理療法・基本的動作訓練」の原理・技術です。特殊な技術も多々あるようですが、基礎ができていれば、理学療法は可能だ、というのが私の考えです。特殊な技術の習得のために、高額な講習費を払って時間をつぶすよりは、基本的な技術を体得することの方が重要だと思います。
 以上、長々と書きましたが、書きつくせない細かい部分は、twitterに投稿していこうと思いますので、そちらも参考にして下さい。

2 件のコメント:

  1. 質問に対し詳しく記事に書いてくださり、ありがとうございます!
    急性期から維持期まである病院が無ければ、急性期を選ぶ方が良いとのこと、とても納得が出来ました。
    急性期から自宅復帰まで見たいと思っていた私は比較的軽度な二次救急の病院を探していました。大学病院は途中で投げ出してしまうという勝手な先入観があり、就職先から除外していたのです。しかし現在行っている実習先が大学病院であり、様々な疾患が見れ勉強になるというプラスの面を実感しています。
    今後就職先を考える際は教えて下さったことを参考にしながら見つけたいと思います。

    また、基礎が重要と書いてくださいましたが、まさに今、私が実習先の先生から毎日のように言われていることです。
    基礎を見直し、実習も就活も頑張ります。

    またコメントさせていただくことがあると思いますが、よろしくお願いします。

    返信削除
  2. MIDORIさん
    大学病院は患者さんのデータが揃っているので、勉強しようと思えば、きりがないくらい勉強することが出てきて、大変だけど充実すると思います。
    ただ、慢性期でも急性期でも、古い病院でも最先端の病院でも、大切なことは基礎だと思います。臨床に出ても基礎ばかり見直す日々です。
    実習も就活も、体を壊さないようにしながら頑張ってください!

    返信削除