2012年3月30日金曜日

第47回理学療法士国家試験合格発表

 理学療法士の国家試験が今年は2月26日にありました。私はちょうど5年前に受験しました。その時も2月末だったと記憶しています。私と一緒に受験した人の数は7000人強でしたが、今回は12000人弱と、大幅に増えています。養成校の増加に伴う受験者数の増加です。
 合格発表は、私の時は5月でしたが、徐々に最近早くなってきており、今年は今日、3月30日が合格発表です。合格率は82.4%と去年(74.3%)よりは上がったものの、平成に入ってからの統計では2番目に低い合格率となりました。
 国家試験は、世に排出される理学療法士の質の維持と、同時に教育の質の維持、という作用をもたらしていると思います。養成校乱立時代があり、教育の質の低下に関して、みなが不安を抱きました。臨床や教育の経験が未熟な者が教員となっていったからです。また、少子化の影響も相まって、学生の取り合いも起こりました。近年、学生数が確保できず、募集停止に至った養成校がいくつも現れています。そんな状況で、国家試験という関門がもしなければ、理学療法士の質は低下し、信頼を失い、理学療法士を目指す若者はいなくなり、この資格自体がなくなってしまう危険があるのです。
 ドミニカ共和国では、この国家試験という第三者機関の評価がありません。理学療法士を目指す者は、大学の理学療法学科に入り、卒業と同時に理学療法士です。また学生の内から病院で働くことができますので、理学療法士と名乗っている学生もいます。(最近驚いたのは、私の配属先の現地スタッフのおよそ半分は大学を卒業していない、という事です。)つまり、学生教育の質が、そのまま理学療法士の質、延いては医療サービスの質に直結するのです。
 そして、教育の質はどうかと言うと、残念ながらWikipediaレベルです。同僚が大学に教えに行っていますが、wikipediaで講義準備を行っています。国家試験がないので、学生に低いレベルの教育をしても問題がありません。向上心も芽生えません。教育の質の低さが、理学療法士の質を下げ、その理学療法士がいずれ教える立場になる。
 それでも、ドミニカ共和国の理学療法士という職種が消滅しない原因はなんなんだろう、と考えてみました。おそらく、医師による治療の結果が悪い患者に、理学療法にいかせて、「後はあなたの頑張り次第」と言うためなんだと思います。事実、長期間の創外固定、整復ができていないピンニング、診断されていない脳障害、RSD、などの諦められた患者を多く見ます。そんな患者たちが理学療法でも何も良くならないと気づけば、もう医者の所にも理学療法士の所にも行かなくなり、忘れられてしまう。
 しかし、こちらの理学療法士の中にも、熱心に私の教えについて来てくれる人がいます。私がやっている事は、カリブ海に小石を一つ投げ入れるような、小さな事ですが、小さなステップから次のステップにつなげていけるようになればいいなかぁと思います。国家試験の話題から、大きく話がそれてしまいました。

2012年3月22日木曜日

レプトスピラ症


過去の流行地域
 レプトスピラ症とは、病原性レプトスピラの感染により発症する病気の総称です。重症型レプトスピラ症(ワイル病)と、軽症型レプトスピラ症(秋やみ)があります。
 病原性レプトスピラという菌は、ほとんど全ての哺乳動物に感染できると考えられており、感染後は、多くが保菌動物となります。レプトスピラは腎臓に保菌されることから、尿中に排出されます。保菌している動物の多くはネズミの仲間ですが、犬や猫、マングース、牛、アライグマなどからもレプトスピラは発見されています。これらの動物の尿を、直接触ったり、尿で汚染された土壌などに、間接的に触ったりすることで、我々人間にも感染する可能性があります。
 レプトスピラ症は、年間30万~50万人が発症していると推測されていて、温帯地帯よりも熱帯地帯に多いとされています。大雨や洪水後の集団発生や、稲作などに従事する農業関係者、下水道での作業者に多く発症しています。
レプトスピラの電顕像
 症状は、発熱などの感冒様の軽症型から、黄疸・出血・腎不全をきたす重症型まで、多彩な症状を示します。通常5~14日の潜伏期間を経て風邪のような初期症状が出て、重症型ではその後5~8日で黄疸等の症状が出始めます。初期症状が出て2週間ほどでさらに症状は強まり、出血が肺で起こると死に至ることもあります。黄疸を伴わない症例の致死率はゼロだが、黄疸を伴う場合は5~10%との報告があります。
 初期症状では診断が難しく、保菌動物との接触の有無、レプトスピラに汚染された土壌等との接触の有無、流行地域への渡航歴の有無などの申告が必要です。
 治療は、感染に対して抗菌薬を用いて、その他臓器障害に対しても治療も並行して行います。人から人への感染はありませんので、感染者を隔離する必要はありませんが、尿の取扱いには注意が必要です。
 今年に入って、ドミニカ共和国では、レプトスピラによる感染者171人、死者16人が確認されているそうです(大使館からの情報)。家にネズミが出る、という隊員仲間もいます。日本では関係なかった病気ですが、こちらでは気を付けなければいけません。レプトスピラ症だけでなく、デング熱マラリア、コレラなど、普段から注意していないと後悔してしまいます。

2012年3月20日火曜日

続ける理由を考える

止める理由は簡単に思いつく
 青年海外協力隊として、だけではなく、日本での仕事や勉強、習い事など、何に関しても言えることですが、「止める理由」を考えることは非常に簡単だと思います。ダイエットをしていても、「付き合いが多いから」とか「今日は仕事頑張ったから」とか。勉強していても、「今日はここまでにして、明日頑張ろう」。仕事に慣れてくると、「ここは手を抜いてもいいだろう」。止める理由を考える、というよりも、自然と思いついてしまいます。

理学療法士の場合
 反対に「続ける理由」を考えることは難しいことだと感じています。普段から考えていないといけません。「なぜ技術向上のために練習を続けるのか?」 今のままでも患者さんは文句を言わずに退院していきます。むしろ「ありがとう」と感謝されることもあります。それなら、もう今のままで十分ではないか、と練習を止める理由を簡単に作れてしまいます。しかし、実際は患者さんがより良い理学療法士と出会っていないだけだったり、患者さんが持っている能力を、患者さんに気づかれないように奪っていたりするのです。

ボランティアの場合
 私は現在、ドミニカ共和国にボランティアとして現地のNGOに派遣されていますが、このNGOにボランティア派遣を止める理由を挙げることは非常に簡単です。
  「ボランティアなしでも患者は来る」、
  「マンパワーもある」、
  「技術は日本レベルではないが、現地では受け入れられているレベル」、
  「理学療法の仕事が好きで、みな一生懸命働いている」、
  「ボランティア派遣にかかる費用や手間をなくせる」
などなど。
技術が低いことを放置してもいいかと聞かれれば、
  「基礎知識がないから教えられない」、
  「日々の業務で多忙で、練習できない」、
  「そもそも誰もそれで文句を言わない」
など。
 第三者が仮に視察に来たとしたら、「ボランティア要らないんじゃない?」という気持ちが自然と湧いてくると思います。だから、「続ける理由」を普段から真剣に考え、ボランティアの重要性を認識している私たちは、視察に来られた方に真剣にプレゼンテーションをするのです。真剣に私たちの話を聞いてもらえれば、きっと理解してもらえる話だと私たちは信じています。

相手を変える方法
 しかし、もし理解を得られなかったら、「聞く耳を持っていなかった」や「最初から否定的な気持ちで視察に来た」など、相手のせいにしてしまうことは簡単です。その方が、こちらも楽です。なぜなら、こちら側が変わる必要がないからです。しかし、私は、こちらの意見が伝わらなかった理由を、「説明が分かりにくかったから」なのか、「与えた情報が不十分だったから」なのかなどと考える必要があると思います。そうでないと、次に同じような事が起こり得るからです。
 専門学校時代の担任の先生に、「相手を変えるには、自分を変えないといけない」と教わりました。当時は実感が湧かなかったですが、今なら理解できます。

ネガティブに負けない
 続ける理由=ポジティブな意見、止める理由=ネガティブな意見、と読み替えることもできます。ポジティブな意見は、普段から意識していないと見つけることができませんが、ネガティブな意見は、自然と意識に上がってきます。真剣な人と無関心な人が話していると、真剣な人のポジティブな話が、無関心な人の否定的な意見につぶされることがよくあります。そうなった時に、相手のネガティブな意見を変えるために、自分をさらに磨くきっかけをもらえた、とポジティブになろうと最近、考えています。
 幸い、私の周りには、何事にも真剣な人が大勢います。これからも、自分にできること、すべきこと、やりたいことを真剣に考え、周りと意見を共有し、前に進んでいきたいと思います。

2012年3月3日土曜日

安全対策セミナー

 日本から安全対策調査団がドミニカ共和国にやって来て、昨日は首都、今日は私の住むサンティアゴで、安全対策セミナーが開催されました。これとは別に、年2回、現地JICA事務所が安全対策連絡協議会というものを開催しており、私たちボランティアだけでなく、随伴家族や専門家などの関係者が一堂に会して、安全対策について再確認しています。これだけJICAは安全に気を遣っている、ということです。
 私たちの安全をサポートしてくれているのは、今回来られたJICA本部の安全担当の方や、大使館の安全対策の方、現地警察の安全対策クラーク、そしてその方たちとボランティアを繋いでくれる現地JICA事務所の方々など、大勢です。私たちボランティアの活動が安全に実施できるのは、自分の安全に考慮した行動だけでなく、こうした多くの方のバックアップがあってのものです。様々な調査や過去のデータなどから、立ち入り禁止地区を設けたり、利用を禁止する交通手段があったり、など様々な安全対策を講じているからこそ、事件・事故が未然に防がれているのです。
 今日のセミナーは、訓練所でも学んだ内容ではありましたが、再確認し、身を引き締めるためのいい機会になりました。質疑応答も活発に行われ、日ごろ疑問に思っていることなどが解消された人もいたと思います。事故や怪我、病気なく任期を全うし、日本に帰ることが、日本で待っている家族や友人などを安心させる一番の方法だと思います。残り1年4か月、元気に過ごしたいと思います。

2012年3月1日木曜日

いつもご覧いただき、ありがとうございます。

 ふと、自分のブログを開いてみると、ちょうど20000アクセスを示していました。
 毎日、30~50人の人が最近はアクセスしてくださっているようです。嬉しいことに、「理学療法」と「国際協力」の二つのキーワードを入れれば、検索結果に私のブログが一番に表示されます。
 少しでも、理学療法士が日本を飛び出し、世界で活躍できるよう、さまざまな情報提供をここで継続していきたいと思っています。今後とも、みなさんよろしくお願い申し上げます。
 (ただいま仕事中のため、今日はこれで失礼します)