2020年11月28日土曜日

グローバルヘルスを考える理学療法士の会ADAPTのオンライン国際カンファレンスに参加して

2020年11月27日、ADAPT Physiotherapists for Global Health(小生訳:グローバルヘルスを考える理学療法士の会ADAPT)の国際カンファレンスがオンラインで開催されました。ZOOMおよびFACEBOOK Liveを用いて講演を聞き、講師への質疑応答を行う、というスタイルでした。

テーマは『感染症流行下における中低所得国でのリハビリテーション』と言うことで、
Tony Lowe氏
 ;Physiopediaの創始者
Zoe Clift氏
 ;HI(Humanity & Inclusion)の人道支援におけるリハビリテーションの専門家
Jonathon Kruger氏
 ;World PhysiotherapyのCEO
Fiona Beckerlegge氏
 ;アフリカで人道支援
Alex Hough氏
 呼吸リハビリテーションの専門家、https://www.alexhough.com/
による講演がありました。

(参照)
録画ビデオ→https://www.facebook.com/ADAPTglobalhealth/videos/?ref=page_internal

ADAPTのオンラインセミナーには何度か参加しており、前回はチャット欄に自己紹介を書き込んだ所、「日本からの参加者がいる」と喜んでもらいました。その時のことを覚えて頂いており、カンファレンス終了後のフリーディスカッションのセッションで司会者に紹介して頂けました。

フリーディスカッションのセッションは、希望者のみ最後にZOOMに再度入室する方法だったためか、ほとんどの参加者はいなくなり、重鎮と思しき方々だけが参加するセッションの中に一人入り込んだ形になりました。

ただ、それが良かったのか、歓迎していただき、連絡先の交換などもできました。オンライン学会は、人と人との繋がりが形成しにくいのがデメリットと感じていましたが、積極的に入り込んでいけば、道は開けると感じました。

人道支援におけるリハビリテーション専門職の人材育成・訓練についていくつか質問をさせて頂き、また何か相談があればメールで問い合わせることができる関係を築くことができました。これは非常に大きな収穫でした。

今後も、全世界的にコロナ禍が続けばオンラインでのセミナーやイベントが続くと思います。一刻も早くこのパンデミックが収束することを願いますが、この機会に、どんどん世界と繋がっていきたいと考えています。

2020年11月1日日曜日

災害時の作業療法


先日、大阪にあります専門学校の作業療法学科2年生を対象に、災害時のリハビリテーションについて講演させていただきました。日本と外国(特に途上国)のリハビリテーション事情を比較し、災害時に作業療法士が医療支援において何をすべきなのか、お話しました。

災害時に緊急医療チーム(Emergency Medical Team, EMT)に必要とされるリハビリテーション専門職には以下の職種がWHOのマニュアルに挙げられています。

 ・リハビリテーション専門医(Physiatrist)
 ・リハビリテーション専門看護師
 ・理学療法士
 ・作業療法士

リハビリテーションのSpecialized Care Teamの認証基準として「最低一人の理学療法士とその他のリハビリテーション専門職による多職種チーム」であることが求められることから、どうしても理学療法士の活動が注目されやすいです。災害時の医療支援って言っても理学療法士がメインでしょ? って思われがちです。しかし、普段の臨床と同様に作業療法士も重要な役割を持っています。

WHOのマニュアルによると、次の疾患に対応できる必要があります。

 ・骨折(創外固定・牽引を含む)
 ・切断
 ・末梢神経損傷
 ・熱傷(移植・皮弁術後)
 ・外傷性脳損傷
 ・脊髄損傷

また,次の技術を有していることが求められます。

 ・基本的なスプリント作成
 ・補助具,装具のフィッティング,使用訓練
 ・ポジショニング,早期離床
 ・患者および介護者へのADL指導
 ・心理社会的サポート(心理的応急処置)
 ・呼吸器ケア(排痰法)

これらを見てどうでしょうか? どれも作業療法士が普段の臨床でも遭遇する疾患や、使っている技術ではないでしょうか? 

作業療法士は理学療法士よりも養成校での授業時間は長いです。それは精神科の授業や実習が作業療法学科では含まれるからです。つまり、精神科領域では理学療法士は教育をほとんど受けていないため、作業療法士には敵いません。

また、上肢のスプリントや義肢に関しても作業療法士の専門です。外傷や感電等で上肢切断の患者が来たり、手の外科後や末梢神経損傷患者へのスプリント作成も作業療法士の専門です。

作業療法士の「作業」という言葉はoccupationを訳したもので、単なる作業(work)ではありません。作業とは「人の心を"occupy=満たす"もの」を指し、災害によって、ぽっかりと穴が空いた被災者の心を、様々な方法で支援することに長けています。心理社会的サポートに関しても理学療法士よりも上手なはずです。

しっかり役割分担して、多角的な視点でリハビリテーションを提供できるよう、理学療法士と作業療法士がタッグを組んで活動できるチームができたらいいな、と思います。いつかWHOのリハビリテーションSpecialized Care Teamに認証されるチームを作りたいです。

(参考)
世界作業療法士連盟が作成した災害マネジメントに関するオンラインコースがあります。作業療法士のために作られた唯一のコースです。コースレビューもありますので、参考にどうぞ。
 ↓

2020年10月17日土曜日

難民支援とリハビリテーション

 先日、JICA地球ひろば主催で行われた「難民支援とコロナ・感染症対策(エチオピアとアフガニスタンの事例から)」と、ADAPT主催で行われた「Volunteering in Greek Refugee Camp」という2つのオンラインセミナーで得た知識と独自に調べたり勉強した内容を合わせて、ここでまとめてみようと思います。

*ADAPTとはPhysiotherapists for Global Health=グローバルヘルスのための理学療法士の集まりで、イギリスの理学療法協会(Chartered Society of Physiotherapy, CSP)公認の団体です。年会費20ユーロで誰でも会員になれます。国際的に活動したい人、途上国で人道支援に関わりたい人の参加を求めています。(会員登録はこちら→https://adaptcsp.co.uk/join-us/)

JICA地球ひろばのセミナーでは、難民とは?や難民支援の現場の幅広い話を聞きました。ADAPTのセミナーでは、難民キャンプで理学療法士としてボランティア活動を行った方の話を聞きました。難民に関しては、これまで身近に感じる機会がなく、勉強もしたことがなかったので、この2つのセミナーでは新しい発見だらけでした。

難民とは、祖国から逃れて難民キャンプのような劣悪な環境で、ギリギリの生活をしている、というイメージを私は持っていました。しかし、難民と言っても様々で、都市部に暮らし、仕事をしている人もいると知りました。私がイメージしていたような難民は、UNHCRやその他NGOが支援をしており、支援の種類には保護、シェルター、水・食料、衛生、教育、保健・医療など多岐にわたります。

現在、UNHCRではCOVID-19の対応に予算が使われ、医療支援に充てられる予算が減っているそうで、結核・マラリア・HIV対策やその他ヘルスケア・メンタルケアへの対応に遅れが出ています。また合法難民と非合法難民で受けられる支援に差があります。

難民キャンプでボランティア活動していた理学療法士の報告の中では、足部の感染症や、暴力による骨折(警察によるものも!)、銃撃による脊損、また元々の障害などに対応したとのことでした。医療へのアクセスが限られており、遠くからリハビリテーションサービスを求めて車いすを押して子供を連れてきた母親の話や、1年以上前の骨折の未治療初診患者の話などもありました。

求められる知識や技術の話では、前述のように外傷、感染症、小児、脊損など幅広く、ジェネラリストでなければいけない、とのことでした。普段の臨床では、限られた疾患を見ることが多いですが、難民支援や災害支援などの人道支援活動においては、このように幅広い知識や技術が試されるので、一理学療法士として成長できるチャンスである、と話しがありました。「これが人道支援に関わる利点である」とのコメントもありました。

理学療法士による難民支援に関してはPREPで2021年1月18日からオンラインコースが始まる予定になっているようです。PREP(理学療法と難民に関する教育プロジェクト)では、増加する難民に対するリハビリテーションニーズに応えるために、理学療法士の能力向上を行い、複雑化する支援ニーズに対応できるようにしようと、教育プログラムが開発中です。

世界の難民はこの10年でおよそ2倍に増加し、2019年の統計では約8000万人いるとされています。今後、もっと増えるのか、減るのか、分かりませんが、災害支援よりもニーズは多いのではないかと思います。これからも、難民支援に関してもう少しアンテナを張っていこうと思います。

(2020/10/29追記)
オンライン開催になった第54回日本作業療法学会の、非公式関連イベントとして国際リハビリテーション研究会が実施した「作業療法学会国際協力セッションZoom延長戦」に参加しました。ここでヨルダンが受け入れているシリア難民への支援に携わった作業療法士の発表を聞きました。

ヨルダンではシリア難民の多くは都市部に住んでいるそうです。都市部であるため、舗装された道はありますが、舗装されていても亀裂が入っていたり、穴が空いていたりと、障害者にとって決してアクセスが良いという状況ではないようです。

また家賃が安いところに住むため、難民は地下やマンション高層部(ヨルダンでは高い所のほうが家賃が安い)に多いそうです。そのため、障害者は家の中から出る機会が減ります。難民という立場からヨルダンに居場所がなく、孤立する原因になっています。

精神科領域の教育を受けている作業療法士でも、日本で障害者と接するのと、紛争により障害者となった人と接するのは大きく違い、苦労があった、とのことでした。紛争、つまり人と人が殺し合う中で生まれた障害者、というのは私たちが想像するよりも深い、目に見えない傷もあるようです。

作業の特性を生かした介入を考えて取り組んでいたそうですが、セルフケアに対する介入はリハビリテーションではなく看護の領域だと言われ、介入に苦労した話もありました。

2020年9月8日火曜日

世界理学療法の日2020 (World PT Day 2020)

毎年9月8日は「世界理学療法の日」です。この日に合わせて、World Physiotherapyは様々はプロモーションを行います。毎年、テーマを決めてポスター等を作成し、近年では、そのポスターの翻訳合戦(?)がすごいです。今年はポスターが公表されて1週間でまずモンテネグロ語が一番乗りで翻訳しました。その語、フランス語(12日)、スペイン語・ブラジル語(13日)、アラビア語(14日)、ハイチクレオール語・ベトナム語(15日)、ルーマニア語・ポルトガル語(17日)、韓国語(19日)、バングラ語(20日)、ノルウェー語(21日)、…と続き、現在34言語に翻訳されています。スワヒリ語やマラティー語なんかもあります。日本語は…まだなようですが日本理学療法士協会JPTAが翻訳協力者を募っていましたので、今も頑張っているのでしょう。(毎年9/8に間に合っていないような…)

今年のテーマは「Rehabilitation after COVID-19」です。日本ではまだあまり浸透していないテレヘルス(遠隔医療)についても触れられています。ここでは、一部のポスターの日本語訳を公開し、残りはJPTAが正式に出すのを待とうと思います。

Infographic 1
Infographic 1
(訳)

新型コロナウイルス感染症の回復に向けた運動プログラムを理学療法士が立案します。

運動は新型コロナウイルス感染症の回復に重要な要素です。自身のペースで行いましょう。運動の専門家として理学療法士は以下のような効果のある運動を指導します。

・体調を整える
・息切れを軽減する
・筋力を強化する
・バランスを改善する
・思考能力を上げる
・ストレスを軽減する
・自信をつける
・体力がつく

体力を取り戻し、呼吸機能を改善させるために、運動を継続的に行いましょう。運動の記録を取ることも良いでしょう。

きつい運動を時々するより、軽い運動を定期的に行う方が有効です。以下のような運動をしてみましょう。

・立ち座りの運動
・足踏み
・階段を上る
・散歩
・踵上げ
・つま先上げ
・片足立ち
・壁に手をついての腕立て伏せ

理学療法は新型コロナウイルス感染症の回復のカギとなります。極度の疲労感や息切れなどの不調を感じた時は、運動を中止し理学療法士に相談しましょう。

Infographic 2

(訳)

新型コロナウイルスに感染した重症者の回復のためには

新型コロナウイルス感染症の重症例では、人工呼吸器や酸素投与が必要になり、長期間寝たきりになります。そこから回復するにはリハビリテーションが必要です。重症者の症状には以下のようなものがあります。

・肺の機能が低下
・重度の筋力低下
・関節のこわばり
・全身倦怠感
・活動範囲の制限や日常生活の制限
・頭がもうろうとしたり混乱する(せん妄)
・飲み込む力が低下したり意思疎通がうまくいかなくなる
・精神的なサポートが必要な状態になる

理学療法は新型コロナウイルス感染症の重症者のリハビリテーションの重要な一部です。重症者は身体的、精神的、社会的に様々な障害に遭遇するリスクがあります。

理学療法士は早期に以下のようなリハビリテーションを開始します。

・早期離床し寝たきりを防止
・簡単な運動から開始
・日常生活動作の獲得
・肺の機能の回復
・呼吸法の指導
・全身倦怠感の改善
・運動と休憩のバランスの取れたプログラムの提供

重度の感染症から回復するには多くの時間が必要です。理学療法士は回復の手助けをし、患者さんに合った優先度の高い項目から支援を行います。理学療法士は多職種連携で患者さんをサポートします。

理学療法士は運動能力の改善や活動性を上げ、日常生活に復帰するお手伝いをします。

2020年8月24日月曜日

複合災害における避難・支援活動

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が世界中で猛威を振るっている今、地震やサイクロン、干ばつや戦争などの別の災害が起こる可能性があります。ある災害の対応中または復興中に、別の災害が発生することを「複合災害」と言い、7月には、日本では『新型コロナウイルス+豪雨』の複合災害が発生しました。さらに地震大国の日本は『新型コロナウイルス+豪雨+地震』の可能性もあります。

新型コロナウイルスの流行により、感染対策をした上での避難所運営、医療活動、復旧作業等を行う必要があります。「令和2年7月豪雨災害」に対するボランティア募集の状況は、県内からのボランティアのみ、または被災地域からのボランティアのみの募集となっていたり、完全予約制、個人ボランティアの受入不可、などの対応を取っています。医療、福祉等の専門職による支援も以前のようにはできません。(参考:全国災害ボランティア支援団体ネットワークがまとめたガイドライン)

避難の方法も再検討されています。避難所が密になることを避けるため、宿泊施設への避難、自宅避難、縁故避難、車中避難などの分散避難がより推進されます。避難するときは、個人の感染防護具(マスクや手袋、アルコール消毒液など)や体温計を持参し、体調管理をする必要があります。新型コロナウイルスに対する差別へ偏見で、体調不良を隠匿する可能性もあるため、申告しやすい環境や雰囲気作りが必要です。

新型コロナウイルス感染者の避難先としてホテルの個室を利用する場合があり、シングルの狭い部屋で外出が制限されます。健常者が比較的広い避難所で生活するよりも、生活不活発病のリスクが増します。生活不活発病の予防には日本理学療法士協会の「リガクラボ」の特集にまとめられています(参考:https://rigakulab.jp/2020/03/11/id000040/)。また、感染者のホテル避難では、感染対策をした上で、食事を自ら取りに行くような仕組みを作り、感染者の運動を促す工夫もできるかもしれません。

命を守るための避難行動も新型コロナウイルスにより躊躇される場合があります。避難指示が出た場合や発災直後は避難所が密になるかもしれません。命を守るために、避難所が密になろうとも受け入れなければならない状況もあり得ます。避難者の理解と協力が必要です。そのために、どのような感染対策を取っているのかや、相談窓口はどこにあるのか、など避難者に対して明確にする等の対応が必要かもしれません。

先日、新潟大学医学部災害医療教育センター主催でオンラインで行われたセミナー『避難生活での健康を守るためには』でも述べられていましたが、最優先は住民の命を守ること、そして第2に感染者を発生させないことです。

分散避難のために、支援が万遍なく届くかどうか、という課題もあります。アウトリーチ型支援を行う団体と行政等の連携が必須です。しかし、支援者が1か所に集まり、情報共有・交換を行う場は3密になりやすく、今まで以上に難しくなります。情報をオンライン可視化するなどの統一した新たなシステム開発が今後必要なのかと考えます。

医療、福祉、教育、観光、交通などの様々な分野で改革が求められています。災害時におけるスタンダードも変わってくると思いますので、アンテナを張っておきたいです。

2020年7月12日日曜日

国際リハビリテーション研究会セミナー2020(オンライン)

三年前に「国際リハビリテーション研究会」というものが発足しました。発足の際のキックオフミーティングに参加したときの記事にある通り、国際協力におけるリハビリテーションに主眼を置いた会です。年1回のセミナーや、年1回の学術集会などを行っていますが、今年はオンライン開催となり、初めてセミナーに参加しました。申し込み時に「会員」と書いて申し込んだのですが、実は会員ではなかったことを、事務局からのメールで知り、今更ながら会員になりました。

今年のセミナーは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の影響で日本に一時退避中の青年海外協力隊(JOCV)3名の活動報告でした。JOCVの話を聞くのは本当に久しぶりでした。私は9年前に派遣されたJOCVですが、参加者の中にはもっと前の方もいらっしゃいました。コメントにもありましたが、今も昔も変わらない、途上国特有の問題点が、今のJOCVにも悩みの種となっているようでした。例えば、

 カウンターパートと協働できない
 現地語が理解できない
 同僚が働かない
 学生が治療
 仕事中、電話やおしゃべりでいなくなる
 謎の治療法
 物がない、電気がない、お金がない
   など。

何も変わってない、と言うよりは、このような状況のところへJOCVを送っているのだと思うので、嘆く必要はないと思います。良くなっているところは支援が終了し自立していっているのだと思います(願います)。

このような環境下に派遣されたJOCVが、カウンターパートと共に、多くの人とコミュニケーションを取りながら、解決策を考え、課題達成に向けて取り組むことに意味があり、JOCV自身が成長することに繋がることが大切です。

今回のセミナーは、現役JOCVの貴重な話を聞く機会ではありましたが、セミナーと言うよりは活動報告会でした。参加者の中にはこれからJOCVを目指すという方もいらっしゃったかもしれません。そのような方には非常にいい時間だったでしょう。私自身はまたJOCVに行きたくなりました。2回目の自分ならこうしたい、というのがあります。現実的には2回目はなかなか難しいのですが…。

セミナー後に総会がありました。適正技術の事例収集や、リハビリテーションの国際事例の収集、スタディーツアーの企画、勉強会の開催、ウェブ講座の作成などの事業計画があるようです。会員になったので、今後の事業の発展に期待したいと思います。

2020年5月20日水曜日

【WCPT News】2020/5/19 COVID-19関連のリハビリテーションに関するWCPT報告書

WCPTはCOVID-19に対する理学療法士による緊急対応についてまとめた報告書を公開しました。

この報告書では個人に対するリハビリテーションに焦点を置き、リハビリテーションを取り巻く幅広い医療システムについて考えようというものです。

この報告書は以下のような内容です:

・COVID-19患者に対する急性期理学療法の実施方法
・COVID-19回復者のリハビリテーション
・障害を有する人および体の弱い高齢者に対する緊急的なリハビリテーション
・これまで受けてきたケアが受けられなくなった短期的リハビリテーションニーズのある人について
・職場復帰について
・公衆衛生学的に制限を受けるリハビリテーション
・サービス提供方法

WCPTのEmma Stokes会長は「理学療法の実践方法は、COVID-19対応によって大きく変化しました。理学療法士は他部門と横断的に協働しリハビリテーションを実施することから、多職種チームの中で不可欠な存在です。

急性期サービスの需要が減少している中、我々はCOVID-19回復後の患者に対するリハビリテーションやそれ以外の幅広いリハビリテーションニーズに応えるための準備をしなければなりません。

リハビリテーションはしばしば見落とされ資金不足なことがありますが、今はかつてなかった程に重要や役割が課されています。経済的にも厳しい今、人々が自立した生活を営み、社会やコミュニティに貢献できるようするために、リハビリテーションを医療サービスの要として推進していくべきです。必要とされるリハビリテーションを皆が受けられるようにすることが回復への手助けになります。

理学療法士はリハビリテーションを実施するだけでなく、費用対効果に優れた革新的なリハビリテーション戦略を考案し実施することもできるでしょう。」と述べています。

この報告書はWCPTがCOVID-19関連で発行を予定している第2のものです。次の報告書ではCOVID-19が脆弱な医療システムやコミュニティに与えた影響について書かれる予定です。

関連資料(英語)
COVID-19に関するWCPT報告書(その2):リハビリテーションおよび理学療法の役割
COVID-19に関するWCPT報告書(その1):卒後教育に与えた影響と卒前教育実施方法

原文:https://www.wcpt.org/news/WCPT-briefing-paper-focuses-on-rehabilitation-and-the-vital-role-of-physiotherapy

2020年4月9日木曜日

黄熱ワクチン接種 at 大阪市立総合医療センター

Yellow Card
黄熱とは、蚊が媒介するウイルスによって引き起こされる病気で、致死率が20~50%と高いです。発熱、黄疸、出血、多臓器不全などの症状が出て、治療法は対症療法しかありません。しかし、副反応の少ない有効な黄熱ワクチンがあり、それにより終生免疫を獲得することができます。以前は10年ごとの追加接種が必要とされていましたが、現在はWHOも単回接種でよいとしており、追加接種を推奨していません。

先日、大阪で黄熱ワクチンの接種を受けてきました。私が住む奈良では接種できず、一番近いところが大阪市立総合医療センターでした。予約制で、渡航先や渡航日程によって優先順位がつけら、優先度の高い人から順に予約ができます。私は1度「予約が取れませんでした」と断られ、今回2回目の申し込みで予約を取ることができました。

接種場所は大阪市立総合医療センターですが、申し込みは大阪検疫所に電話して行います。黄熱ワクチン接種を希望していることを電話で伝えると、渡航先や日程、他に希望するワクチンなどを聞かれます。そして後日、予約が取れたか取れなかったか電話で連絡が来ます。予約が取れなかったら、また次回の受付期間に電話で申し込みます。

予約が取れた場合は、そのまま電話口で「10分ほどお時間大丈夫ですか」となります。名前を漢字とローマ字でどう表記するかや、生年月日、住所、国籍、病歴、服薬状況、当日の持ち物、集合時間などの話があります。

支払いは収入印紙で行いますので事前に購入しておきます。私は郵便局で購入しましたが、小さな郵便局では10円単位での印紙の取り扱いがない場合がありますので、事前に電話で問い合わせてから行った方がいいと思います。

当日、総合受付で診察券が発行され、2階のセミナールームに案内されます。問診票や申込票を書いて、収入印紙を提出します。その後、接種担当の医師がワクチン接種に関する一般的な説明を行い、黄熱だけでなく、各種感染症に関する注意喚起を行います。そして、いよいよ接種です。私が接種を受けたときは他に7名ほどの渡航予定者が接種に来ていました。

接種は診察室で行われます。医師に「あなたは渡航先未定の方でしたね。どうして受けられるのですか?」と聞かれました。国際緊急援助隊に登録しているためであることを伝えると「JDR?じゃあ警察の方?」と聞かれました。医療チームで理学療法士であることを伝えると「いつもJDRは警察や消防のゴツイ人が来るので」と笑っていました。

接種が終わると、『予防接種又は予防薬の国際証明書』いわゆる『イエローカード』が交付されます。現在は黄熱に対してのみイエローカードが発行されていますが、以前は天然痘やコレラも対象だったそうです。発行されたイエローカードに記載されている名前や生年月日がパスポートのものと相違ないか確認し、パスポートと同じ署名をして完了です。

イエローカードはパスポートよりも横1cm、縦2cmほど大きいです。ですので、半分に折り曲げてパスポートに挟んでおくようにと言われました。生涯有効なので、破損しないようにラミネート加工を思いつく人もいるそうですが、そのような加工をした証明書は認められない国もあるそうなので、そのまま大切に保管する必要があります。

再発行は手数料がかかりますが10年以内なら可能だそうです。10年間は接種履歴をデータとして大阪検疫所で保管しているからです。10年を過ぎても「あきらめないで電話して」と検疫所の方が言っていました。保管義務が10年だからと言って、10年経ったらすぐにデータを消す、ということはない(と思う)からだそうです。データがなければ、また接種しないといけないそうです。黄熱ワクチンは値上がり傾向にあるそうなので、再接種となれば今より高くなっているかも、と言っていました。

昨年のモザンビークへのJDR派遣では、近隣の国への緊急避難に備えて1次隊はイエローカード所持者のみで派遣されました。そのため、私は1次隊には手を挙げることができませんでした。そのようなこともあるので、黄熱ワクチンは接種しておいた方がいいです。

2020年3月9日月曜日

【オンラインコース】WFOT Disaster Management for Occupational Therapists 2019

世界作業療法士連盟(WFOT)がオンラインコース "Disaster Management for Occupational Therapists" を昨年から公開しています。作業療法士のための災害マネジメントコースです。作業療法士向けに作成されていますが、もちろん理学療法士でも学ぶことができます。

このコースでは、自分が架空の国際NGOにボランティアとして登録するところから始まります。その後、NGOの代表者からメールを受け取り、被災地ですでに活動しているボランティアのサポートをするように指示されます。被災地の状況や困っていることなどが提示され、それを見てアドバイスをメールで送るのが課題となります。

他のコース受講者が送ったメールも見ることができ、さらにそれにコメントしたりすることで議論もできる形式になっています。様々な視点の意見を参考にすることができます。

話は時系列で進んでいきますので、発災直後の支援から復興に至るまでの各ポイントで課題が出ます。コースに出てくる災害は、ウガンダの洪水被害、フィリピンの台風被害、中国の地震被害です。

参考図書として『Disaster and Development; An Occupational Perspective』が使われていて、「この本の第何章を参照してください」と所々で出てきます。WFOTの会員は30ドルで購入できるようです。アマゾン等では40ドルほどで出品されています。

ただ、99ドルの有料コースなので、少なくともこの本のその参照箇所くらいは、本を買わなくても分かるようにはしていて欲しいな、というのが感想です。私は災害を作業療法士の視点で見た書籍を他に知らなかったので、興味があり買いました。Part1の総論的な章は、英語の難易度がやや高く、読み進めるのが大変な感じです。Part2ではケーススタディーになっており、興味のある所から読み進めることができます。物語調になっていたりして読みやすい章もあります。

コースの最後には確認テストがあります。全部で17問の選択式で、正しい記述または誤った記述を選ぶ問題です。3問間違いでしたが、そのどれもが、オンラインコースでは取り扱われず、上記の書籍で取り上げられているトピックスでした。しっかり読んで、正しい解を導き出したいと思います。

何はともあれ、コースは無事修了しました。英語なので苦労する部分もありましたが、災害におけるリハビリテーションに関して、作業療法士の視点を学ぶことができたのは、「リハビリテーション専門職」と包括されるEMT内での立場からすると、非常に有益なものだったと感じます。

2020年2月27日木曜日

【JADM25発表内容】③成果、課題

②症例報告 からの続き

成果をまとめるとこのようになります。杖はなぎ倒されたキャッサバを使用することで、環境負荷が少なく、不要となれば自然に返すことができます。地面に刺せば育てることもできると思います。

椅子も現地で容易に入手できる段ボールを使用し、作成するところを現地の人も見ていたので、もし破損しても自分たちの力で作り直すことができると考えます。

障害を有する人たちは、災害による影響をより受けることになるため、発災前から障害を有する人にリハビリテーションを行うことができたことは意義深いと思います。

またリハビリテーションの観点から予防医学で言う一次予防・三次予防ができたことは、急性期治療が災害時には注目されやすい中で、特筆すべき成果かと考えます。

今後の課題として、平時からできることと言えば、機材の充実や、各種外国語で作成した運動指導用のパンフレットの準備などが挙げられると思います。

また、今回、症例5のように自力では診療所にたどり着けない方を、現地の人が連れてきた例がありましたが、この他にも、医療やリハビリテーションが必要でも診療所に来られない方がいたと予想されます。そういった隠れたニーズを発見するためにも、活動エリアの巡回ができればよかったと考えています。

今後、手術も行うようなチームで派遣される場合には、長期的なリハビリテーションニーズが発生することを視野にいれて、リハビリテーションが可能な転院先の確保や調査が必要になると考えます。

最後に、災害医療におけるリハビリテーションがさらに発展するために、実践のみならず、調査・研究等も行わなければいけません。そのためには、どのような調査ツール・評価ツールを用いればよいのか、今後、多くの人と議論を交わしていきたいと考えています。
以上

2020年2月26日水曜日

【JADM25発表内容】②症例報告

①はじめに、背景、からの続き

では、ここから、モザンビークでの活動について説明します。モザンビークにはイタリア、ポルトガル、アメリカ、赤十字など様々な国・機関から医療支援のチームが入っていましたが、EMTCCの方からの情報では、リハビリテーション専門職がいるチームは日本の国際緊急援助隊のみだったそうです。日本は総患者数794人を診察し、私が活動した二次隊では、リハビリテーションの対象となった患者が5人いましたので、報告します。

症例1から3は歩行補助具を作成しました。裸足で歩き足底を怪我した方、遊んでいて転倒した膝打撲の少女、サイクロンにより落ちた屋根で膝を打撲した方でした。サイクロンによりなぎ倒されたキャッサバの枝で杖を作りました。乾燥して強度のあるものを選び、適切な長さに切り、歩行訓練をしました。3例目の方は、特に荷重が困難でしたので、松葉杖を簡易的に作成し、上肢で支持できる量を増やす試みをしました。

症例4は、がれきの撤去等で右肩に疼痛を生じた方でした。個別に徒手療法を行うことは普段の臨床のようにはできませんので、愛護的なセルフエクササイズを指導し、実践してもらうことにしました。この時は、口頭での指導のみとなりました。

症例5は、被災前から歩行困難な方で、地面を這って生活していました。右股関節術後の拘縮と運動時痛があり、周囲の人に助けられながら生活していました。この日は周囲の人が「診てもらったほうがいい」とJDRの診療所まで自転車の荷台に乗せて連れてきました。

高齢であること、地面での生活では不衛生であること、地面での長坐位では体幹正中位にできないこと、さらには下肢屈曲の機会を作る目的から、段ボールを使って簡易的な椅子を作成しました。これにより感染症や誤嚥の予防、拘縮の悪化の予防を目指しました。

③成果・課題 につづく

2020年2月24日月曜日

【JADM25発表内容】①はじめに、背景

「2019年モザンビークサイクロン災害におけるJDR医療チームの活動:リハビリテーション」ということで発表させていただきます。

まず、世界保健機関WHOが定めるリハビリテーションの定義ですが、「個々の環境に応じて機能を最大化し、病気等による能力低下を改善するために、多職種チームで行う全人的アプローチ」となっています。多職種がキーワードで、理学療法士一人が担うものではなく、医師・看護師や現地の文化的背景を理解した協力者などと共に行う必要があります。

このリハビリテーションの概念は、災害があってもなくても、障害を有する人にはなくてはならない物です。その必要性は災害や紛争が起こるとより高まることが、世界的に論文等で報告されています。しかし、現状、紛争や災害が起こると、急性期治療や外科的治療が優先され、リハビリテーションは忘れられたままになっていることが多いです。

さらにこういうデータもあります。この地図は災害が多い国を赤く表示しているのですが、災害は中低所得国に集中していることがわかります。

またWHOによると、その中低所得国においてはリハビリテーションを専門にする人の数が、人口10万人に対して1人しかいないそうです。つまり、災害が多い国のリハビリテーションは発展途上である可能性が高く、災害が起こったら、急増するリハビリテーションニーズに現地の力で対応することは困難であることが予想されます。

そのような状況で、現在、国際的にどのような対応が取られているか、一部紹介します。国際リハビリテーション医学会が、災害時にリハビリテーション専門職からなるチームを結成し派遣するためのメンバーリストを作成し、さらにそのチームがWHOの緊急医療チーム(EMT)に認定されることを目指しています。また、ISPRMやHI(Humanity and Inclusion)というNGOなどから無料のオンライン教育プログラムが提供される予定にもなっています。

②症例報告へ続く

2020年2月22日土曜日

第25回日本災害医学会学術集会 in 神戸

2020年2月20〜22日、神戸で開催された第25回日本災害医学会学術集会に参加し、ポスター発表もさせて頂きました。

学術集会自体が直前まで開催されるかどうか不透明でしたが、COVID-19に関連する業務に当たられた方や発熱•咳等の症状がある方の学術集会参加をお断りする、という形での開催となりました。さらに自主的に参加自粛する方もおられた結果、多くの座長の欠席、演者の変更、演題の取り下げが起こり、ポスター掲示も隙間が目立つ状態でした。

演題取り下げが多かったため、各セッションでは発表時間や議論に比較的時間的制約がなく、どこも進行自体はスムーズだったと感じました。空いてしまった大きな講演でも、臨時講演を急遽用意するなど、運営側の努力を要所要所で感じました。


今回の学会では、昨年のモザンビークサイクロン災害における国際緊急援助隊の活動に関する演題が23ありました。成果や課題などを他の何より詳しく知ることができました。私の発表も、正式な報告書に書いた内容よりも濃いものになりました。(個人的な考察も含むため)

またリハビリテーションに関する演題は、私のものを含めて14ありました。全ての発表を聞くことはできませんでしたが、リハビリテーション専門職としての視点から、みな災害医療に一石を投じられていました。

海外からの招待講演では、英語は通訳はありませんでしたが、イタリア語は逐次通訳が入りました。演者は同時通訳なのか逐次通訳なのか事前に聞かされていなかったのか、時間を大幅にオーバーした上、途中で残念ながら終了となりました。通訳の方の日本語能力もかなり低く、それも非常に残念でした。運営スタッフ側はCOVID-19よりも想定外だったのではないでしょうか。

聞きたい演題の多くが、時間的に重なっていて、諦めたものもたくさんありますが、とても得るものが多かった3日間でした。

2020年2月1日土曜日

【紹介】Early Rehabilitation in Conflicts and Disasters

Humanity and Inclusion(以下HI)がこの度、紛争や災害時の早期リハビリテーションについて特設ページを開設するとともに、新たなハンドブックを公開しました。下記のリンクからご覧いただけます。

Early Rehabilitation in Conflicts and Disasters特設ページ
https://hi.org/en/early-rehabilitation-in-conflicts-and-disasters?fbclid=IwAR1JaHz7c8d7SbPvQVtyBdfZ9UdXETVMHarl43FgEBcPZdKVa3JYjE6hp2E

紛争や災害が起こった際には、外傷患者が急増し、急性期治療に加えて早期リハビリテーションのニーズが非常に高まります。しかし、紛争や災害を経験した国の多くのリハビリテーション専門職は、それに対応するスキルを完璧に備えているわけではありません。

HIは国際赤十字委員会ICRCや国境なき医師団フランス、CBM、Livability、世界保健機関WHOと協力して、世界初の教育パッケージを作成しました。その一つにハンドブックがあり、切断・骨折・末梢神経損傷・脊髄損傷・脳損傷・熱傷の6領域において、写真やエビデンスとともに解説されています。

ハンドブック
https://hi.org/sn_uploads/document/36199-Humanity--Inclusion-Clinical-Handbook-web_1.pdf

また、今後、ユーチューブにて教育用の動画が公開される予定です。私はチャンネル登録をし、動画が投稿されたら通知がくるように設定しました。

YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/c/EarlyRehabilitationinConflictsandDisasters

さらに、2020年5月にMOOC(大規模公開オンライン講義)で上記ハンドブックや動画をもとにしたEラーニングが可能となる予定だそうです。DisasterReadyのサイトで開始されます。

HIはその名称がHandicap Internationalと言っていた時代から障害者支援に力を入れていました。現在も災害・紛争時のリハビリテーションにおいてはリーダー的活動をされています。今後もHIの活動にアンテナを立てて、日本も共に進んでいけるように、私も努力します。

2020年1月11日土曜日

【HI UK News】2020/1/9 麻疹流行のサモアでイギリス人理学療法士が活動

2019年12月、イギリスの緊急医療チームUKEMTは3人の理学療法士をメンバーに入れて、大流行となった麻疹に対する緊急医療援助としてサモアへ飛び立ちました。UK Aidの資金協力のもと、UKEMTはイギリスが実施する外国での人道的支援の最前線にいます。

UK-medが訓練したイギリス人医師と看護師は、麻疹による合併症の治療に焦点をあてました。GaelleとSusieとMaeveの3人はHumanity & Inclusion(HI)が訓練した理学療法士のスペシャリストです。彼女たちのおかげで、チームは完璧なものになりました。

•麻疹(はしか)とは

麻疹は非常に感染力の強いウイルスで、咳やくしゃみで人から人へ広がります。一人の患者から12人へ感染すると言われており、合併症として肺炎、重症下痢、脳炎を起こす場合があります。

•緊急援助におけるリハビリテーション

人道的危機においてはしばしば、短期的および長期的リハビリテーションのニーズが増します。それにも関わらず人道的支援において、リハビリテーションは忘れられている事が多いです。HIは2013年からUKEMTのプロジェクトの一部として、リハビリテーション専門職の人道的支援のための訓練を実施しています。

サモアでは、人道的支援としてリハビリテーションの提供が必要とされていました。麻疹による呼吸器合併症や脳炎で死者が出たり、障害を負う患者がいます。特に小児の場合は重症化しやすいです。早期にリハビリテーションを開始し、呼吸器合併症を予防したり、回復を促したりできます。

•サモアでの緊急援助

重症の小児患者が非常に多く、サモアの医療システムは対応が追いついていませんでした。GaelleとSusieとMaeveはTupua Tamasese Meaole病院(TTMH)で、早期リハビリテーションを行うためのサポートをしました。特に小児の呼吸器リハビリテーションの手助けをしました。また、現地や海外からのチームと共に、他にリハビリテーションニーズがないか調査しました。彼女らはイギリスにいるHIのアドバイザーから助言をもらいながら活動していました。

•Zoe Clift(HIの国際緊急リハビリテーション援助の専門家)の言葉

「今回の理学療法士のサモア派遣はイギリスにとっても重要な意味があります。GaelleとSusieとMaeveは感染症対策における対応スキルを持ち帰ってきました。これは今後に活かされるでしょう。」

•Maeve Tohillのインタビュー



「UKEMTで派遣されたのは初めてです。サモアに到着する前は不安がありましたが、チームの他のメンバーや現地スタッフなどと合流すると、その不安は消え去りました。

サモアに到着すると私たちは温かく迎えられました。初日から病院メンバーとして受け入れられ、現地スタッフとは、もう何年も一緒に働いてきた仲間のようでした。サモアの医療チームや国際EMTのプロ意識や献身を目の当たりにして、私も彼らに付いて行こうと決めました。

感染症対策において派遣された最初の理学療法士となれたことは栄誉であり、多くの学びがありました。現地の二人の理学療法士が、急増するリハビリテーションニーズに対応しており、仕事量が過酷なものになっていました。私たちはその手助けとして、子供から大人までの麻疹患者の治療をしたり、他の病気で入院している患者の対応もしました。そうすることで、現地スタッフは地区病院で治療ができるようになり、TTMHへの麻疹患者の入院は減りました。」

•Susie Wolstenholmeのインタビュー


「外国で働いたことがなかった私は、少し派遣に不安がありました。しかし、サモアの人々の歓迎はすごかったです。理学療法士としての仕事は、小さな赤ちゃんから大人まで多岐に渡りました。私たちはサモアの理学療法士チームのサポートをしました。彼らは大流行が始まってから休みなく働いていました。

とても素晴らしい経験をしました。自分の知識や技術をミッションのために使う事ができ感謝しています。資材が乏しい状態でいかに活動するか学びました。またこのような仕事をもっとしたいです。」

•TTMHの理学療法士長Rube Uneのインタビュー



「UKEMTを私は誇りに思います。私たちは本当に呼吸器リハビリテーションを手伝ってくれる理学療法士が来ることを望んでいました。

彼女らはイギリスからはるばる来てくれて、私は一緒に働けたことを幸せに思います。非常にたくさん働いてくれました。Gaelleと、最初から最後までいてくれたSusieとMaeveを誇りに思います。

彼女たちがここにいてくれたおかげで、私は地区病院での仕事に集中でき、地区病院からTTMHに転院してくる麻疹患者を減らすことができました。SusieとMaeveは小児の集中治療室で頑張ってもらい、いい結果が出ました。今後もサモアとイギリスの理学療法士の交流を続けていきたいと思っています。

彼女たち理学療法士だけでなく、サモアを助けに来てくれた医師、看護師、ロジスティシャンみんなの今後のますますの活躍を願います。本当にありがとう。そして、よいお年を!」

•イギリス緊急医療チームUKEMT

UKEMTはイギリスが行う外国での緊急医療支援の最前線です。2013年からHIはリハビリテーション機能をUKEMTに備えるために活躍しています。


出典:https://humanity-inclusion.org.uk/en/news/british-physiotherapists-tackle-deadly-measles-outbreak-in-samoa