理学療法士→青年海外協力隊→日本で臨床をしながら緊急援助について学ぶ(現在)→大学院?→国際協力をライフワークに
2011年3月11日より発生しました東日本大震災において、犠牲になられた方々に心よりご冥福をお祈り申し上げます。 また被災された方々に対しましては、お見舞い申し上げるとともに、一日でも早くの復興を応援・支援させていただきます。
2016年4月16日より発生しております熊本地震において、亡くなられた方に心からご冥福をお祈り申し上げますとともに、被災された皆さまにお見舞い申し上げます。

<祝>当ブログの読者Y.Kさんが青年海外協力隊(24-1 モンゴル)に合格した、という非常に嬉しい知らせを受けました。おめでとうございます。
<祝>当ブログの読者で青年海外協力隊を目指すMIDORIさんが理学療法士国家試験に合格した、というおめでたい知らせを受けました。もう同じ臨床家です。お互い頑張りましょう。
<祝>当ブログの読者KENJIさんが青年海外協力隊(25-2 タイ)に合格した、というまたまた嬉しい知らせを受けました。おめでとうございます。
<祝>募集説明会で体験談をお話させて頂いた方2名も青年海外協力隊(モザンビーク、ベトナム)に合格したと再会時に報告がありました。おめでとうございます。
<祝>2013年JOCVリハネットセミナーで私の活動報告を聞いてくださったA.Kさんも青年海外協力隊に合格されました。おめでとうございます。
<祝>国際緊急援助隊に当ブログを見て興味を持って頂いたOTさん、青年海外協力隊説明会でお会いしていたOTさん、フェイスブックで私を見つけて質問して頂いたPTさんが仲間入りしました。みなさん青年海外協力隊経験者でした。

青年海外協力隊  体験談&説明会
  *当ブログの作者(ドミニカ共和国、理学療法士)は今回の春募集では体験談を話に行くことができませんが、興味をお持ちの方はぜひお越しください。私に質問がある場合は、関連する記事のコメント欄に質問いただければ、回答いたします。

国際緊急援助隊(JDR)医療チームへの参加に関心のある方へ
  *JDR医療チームはWHO EMT InitiativeのType2認証を受けており、リハビリテーションの提供が求められるチームとなっています。理学療法士・作業療法士で関心のある方、仲間が増えるとうれしく思います。
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2017年7月22日土曜日

JDR(国際緊急援助隊)医療チーム 中級研修

 国際緊急援助隊(JDR)に登録されている人は、登録維持要件の1つに中級研修の受講が含まれています。7/22にJICA東京で実施された「2016-17年度 第三回中級研修」に私は初めて参加させて頂きました。

 なお、導入研修についてはこちら。
(参考)http://lily-international-cooperation.blogspot.jp/2016/12/jdr.html

 この中級研修は2年で3回の研修を1クールとしており、来年度から新たなクールに入ります。新たなクールではtype 2としての派遣をより想定した内容になるそうで、今、研修内容を思案中だそうです。type 2と言えば、やはり私が気になるのは「リハビリテーション機能を持ったチーム」という事です。


 今回の中級研修ではリハビリテーションに関する内容はなく、私はロジスティック班としてエアテント設営・撤収、発電機や焼却炉の取り扱い、ロープワークなどを学びました。焼却炉は800℃以上の高温になるもので、今回、初めてJDRが購入し動かしてみたものでした。皆、講師も受講生も興味深々でした。


 私としてはエアテント設営を再び経験できて、忘れている部分を思い出せて良かったです。また、私たちの班がエアテントを立てた後、外科班が中で模擬手術をしている場面を見学できて、現場のイメージをよりしっかり持つことができました。


 多くの内容は、派遣時に役に立つことはもちろんですが、同時に、自分が被災したときにも非常に有用なものでした。しかし、研修の時だけ練習してもすぐに忘れてしまうので、定期的に思い出すために自主訓練しなければなりません。ロープワークなどは、息子がアウトドアに興味を持ち出せば一緒に遊びながら学べるかなと思いました。

 次の中級研修までは一年弱ほど時間があるそうです。今翻訳を進めているWHOが作成したEMTのためのリハビリテーションマニュアルにも対応した研修を企画していただけるよう、私も頑張ろうと考えています。

 例えば、翻訳してきた内容を参考に考えてみると、

・リハビリテーション専有スペースは作れるか
・リハビリテーション職種を何名配置するか
・リハビリテーションのための資機材にはどのようなものを持っていくか
・持っていった物をどう使うか
・退院支援をどのように行うか
・サイコロジカル・ファーストエイドの知識
・現地医療施設との連携の方法。

 また、細かいテクニカルな部分では、

・術後の早期離床をどのような基準で進めるか
・切断肢の断端形成のための弾性包帯の巻き方の練習
・脊髄損傷や末梢神経損傷の患者に行う神経学的評価の練習
・術後患者などに行う呼吸理学療法の手技の練習
・松葉杖や車椅子などのフィッティングや使い方の指導の練習
・入院患者の褥創予防のためのポジショニングの方法。

 WHOのマニュアルでは、引き継ぎ隊でも同じように援助ができるよう技術・知識の統一が必要とされています。JDRが行う外科治療に対応したリハビリテーション手順を医師と協力して作らなければいけないと思います。リハビリテーション職種というのは、他のどの医療技術者よりも個人の技術・知識レベルの差が大きいと感じています。きちんとJDRのリハビリテーションマニュアルを作成しないと危険な気がします。

 type 2に認証されて最初の中級研修のクールが来年度から始まります。いろいろ協力していけたらと思います。

2017年4月17日月曜日

国際リハビリテーション研究会キックオフミーティング(2017/4/16)に出席して

WCPT Photo Competition 2012
 「国際理学・作業療法学(案)」という記事を書いてから随分と時間が経ちました。少しずつその中身を作り上げて行こうという計画でしたが、実際はほとんど進んでいません。そのような折りに、国際リハビリテーション研究会キックオフミーティングが東京で開催されました。そこには協力隊同期が私の他に三名も参加しており、同窓会のようで楽しめました。この分野に熱い隊次なのだと再確認できました。

 このミーティング(主催者はセミナーではないと強調していました)では「国際リハビリテーション学」という学問を自立させるべく研究会を立ち上げ、過去の実績や経験・技術をまとめたり、積み上げたり、学術的に発展したりするためにはどうすれば良いかを考える会でした。

 国際看護学というのは国が定めるカリキュラムに組み込まれており、国家試験にも国際関係の問題が出題されているようです。「国際」と付くと海外での支援活動を想像するかもしれませんが、国際看護学という学問の狙いはそこではありません。「国際看護学を学ぶことでより良い看護を提供することができる。なぜなら看護の対象は『人間』であり、背景に様々な文化、風習、宗教、価値観を持っている。幅広い視点から対象者を見ることは国内外を問わず看護を行う上で重要である」ということだそうです。

 これは看護をリハビリテーションに置き換えて読んでも違和感はないと思います。この観点から「国際リハビリテーション学」を解剖していくと、
 宗教とリハビリテーション
 文化とリハビリテーション
 政治とリハビリテーション
 経済とリハビリテーション
 開発とリハビリテーション
 災害とリハビリテーション
などに細分されるのではないでしょうか。

 「国際」と言われてよく想像される青年海外協力隊は、もともと私たちが持っているリハビリテーションの知識・技術に、上記の宗教・文化・開発などの知識を組み合わせて活動しているものだと私は考えます。もし役所に配属されるなら政治を知らなければならないでしょうし、貧困削減が上位目標にあるなら経済・開発を知らなければなりません。

 災害に関しては、災害の種類によって、例えば、地震・津波・洪水・火災・干ばつ等にさらに細分化されるのかと思います。この辺りはまたJDRの研修などを通して考えていけたらと思います。

 このような事を私は想像していたのですが、今回のミーティングでは、国際協力を主軸に置いた考え方のようでした。協力隊などでの活動をいかに学問的に残すか、事例を蓄積していくかを重点課題としているようでした。国際協力だけを対象にするならば、「国際リハビリテーション学」という冠は仰々し過ぎると思います。実際は国際協力だけを取り扱うわけではないでしょうが、一日しかない今回のミーティングではそういう印象でした。

 同期とも話したのですが、「国際」も「リハビリテーション」も扱う範囲が広く漠然とした概念です。二つ合わせて新しい概念ができるかと言うとそうではなく、今ある知識や技術の寄せ集めになると思います。寄せ集めた中から、使えそうなものを選び出し関連付けていくという作業になるのではないでしょうか。

 そもそも理学療法も、解剖学・生理学・運動学などの元々ある学問を基礎に、病気を考慮して行ってきたものであり、すなわち寄せ集めです。AKA-Hも独自の発見はありますが基礎は、解剖学・運動学・関節生理学・組織学などの元々ある学問です。寄せ集めて体系化する作業は大きな苦労を伴うと思いますが、国際リハビリテーション学というものを普及させるには誰かが舵を取らないといけません。

 ミーティングでは、主催者は「外枠は作った。中身はまだない。これから皆で作り上げて行く」と述べていました。しかし、前述のように中身となり得るものはすでにたくさんあって、今まで外枠がなかっただけだと考えます。その外枠を慎重に作らないと今後、混乱するのではないかと思います。外枠の議論がまだまだ必要です。中身はその後でいいので慌てずに外枠作りをしないといけないと思います。

 リハビリテーションは単独では存在しません。理学療法も作業療法も「物理医学とリハビリテーション(PM&R)」という名の下で発展しました。言語聴覚療法は「耳鼻咽喉科とリハビリテーション」。このような流れに倣うと、「宗教とリハビリテーション」「開発とリハビリテーション」など、国際リハビリテーション学には先に述べたような様々な『とリハビリテーション(and rehabilitation、&R)』が出現しそうです。

 「宗教とリハビリテーション」という外枠があれば、そこに過去の宗教に関する経験を蓄積していくのです。イスラム教徒の患者に対して行った配慮、キリスト教徒の患者の対応での失敗談、土着宗教の例、などなど。

 DALYsやジニ係数などは「経済&R」、持続可能性や適切技術や就労支援などは「開発&R」、医療制度などの政策がらみは「政治&R」。計画立案やPDCAなどはリハビリテーションとは直接結び付かないので&Rからは切り離した方がよいのかな、と思います。

 この&R案はまだまだ改良の余地があると思います。受け入れてもらうにはもう少し洗練させないといけないでしょう。今年11月に第1回学術集会をやろうと企画しているようですので、そこで改訂版&R案を披露できたらいいかな、と考えています。いろいろな人の意見も取り入れて作っていこうと思います。ご意見ございましたら、是非コメントをお願いいたします。

2016年12月13日火曜日

JDR(国際緊急援助隊)医療チーム 導入研修

 先日、JICA東京で2泊3日で行われた「第54回国際緊急援助隊(JDR)医療チーム導入研修」に参加してきました。JDRについては以前、記事(2016/3/8)で理学療法士の役割が重要視され始めている、という事を書きましたが、その点についていろいろ知ることができました。
 災害が発生すると多くの国やNGOなどが緊急医療支援を行います。その医療チームの診断レベル、治療レベル、ロジスティックレベルは非常に高いものから、如何わしいものまで様々です。特にハイチの地震の際に、その問題をWHOが取り上げ、対策に乗り出しました。それが緊急医療チーム(EMT)認証制度です。これにより、医療チームの質の保証と信頼性を確保できるようになりました。EMT認証には、type 1からtype 3とspecial cellの4種類の分類があり、今年、JDRはEMT type 3以外の全ての認証を得て、手術も可能となりました。type 2、3、special cellにおいてはリハビリテーションに関しても対応できなければならないとWHOが明記しています。
 今回の研修には4人の理学療法士が参加し、無事みな合格し、本登録の手続きに入ります。被災国からリハビリテーションに対応できるチームの要請があった場合に備えて、今後もっとJDRに登録している理学療法士が増えないといけないと感じます。マニュアルの作成や、必要機材には何があるか、何が具体的にできるか、などこれから整備していく段階です。JDR登録PTのネットワークを作る必要があると思いますので、そこから動いていこうかと考えています。
 非常に濃い3日間の導入研修の次には、もっと濃い中級研修があります。「より詳しくは中級研修で」という項目も多々あり、中級研修に参加し、学ぶことが今から楽しみです。


<参考>


・2016年11月発行のEMT Initiativeという冊子を読むことができます。
http://www.who.int/hac/techguidance/preparedness/emergency_medical_teams/en/

・EMTに関するWHOのエクストラネット
https://extranet.who.int/emt/page/home

・EMT認証基準に関する手引書(ブルーブック)
http://www.who.int/hac/global_health_cluster/fmt_guidelines_september2013.pdf?ua=1

●JDRのEMT認証について

・JICAのプレスリリース
https://www.jica.go.jp/information/jdrt/2016/ku57pq00001v8lkl.html


●EMTにおけるリハビリテーション関連職の知識・技術・資材等の必要水準(WHO草案)
MINIMUM TECHNICAL STANDARDS AND RECOMMENDATIONS FOR REHABILITATION
https://extranet.who.int/emt/sites/default/files/Minimim%20Technical%20Standards%20and%20recommendations%20for%20rehab.pdf

●WCPTがまとめた災害時のPTの役割
http://www.wcpt.org/sites/wcpt.org/files/files/resources/reports/WCPT_DisasterManagementReport_FINAL_March2016.pdf

●国際人道支援をより効果的に行うための電子教材(Eラーニング)
WHOのウェブサイトでも紹介されていた無料学習サイト。ハーバードやIMCなどが共同で作成しています。
http://www.buildingabetterresponse.org/

2016年9月8日木曜日

World Physical Therapy Day ( 9月8日)

毎年、9月8日はWorld Physical Therapy Day(世界理学療法の日)です。今年は「健康寿命を延ばそう」というテーマで取り組みが行われています。これは一般の人に対するキャンペーンで、理学療法が人々の生活をどんなに良いものにしてくれるかをポスターやパンフレットなどでお知らせします。
 ちなみに去年は「能力を最大限に使う Fulfilling Potential」、一昨年は「社会参加のための身体作り Fit to Take Part」という内容でしたが、日本ではあまりこう言った活動の認知度がPTの中でも低いようです。しかし今年は日本理学療法士協会の国際部が、ポスターやパンフレットの翻訳を行い、世界理学療法連盟( WCPT) のウェブページにJapanese versionとして正式に公開されましたhttp://www.wcpt.org/wptday-posters-japanese。これをきっかけにWCPTの活動にも興味を持ち、アンテナを張れるように多くの人がなればいいと思います。
 ところで、今年のテーマは英語で、Add Life to Yearsとなっており単語自体は簡単ですが、英語学習者でも訳しにくい表現かもしれません。もともとAdd Years to Lifeという表現があり、これは「長く生きる」という事を言っています。しかし、現代社会において世界的に平均寿命が延びてきた今、単に長生きを目指すのではなく、健康的に過ごす時間を増やそうと言う呼び掛けをするため、YearsとLifeを逆にしたスローガンが考案されたと私は考えています。
 WCPTの全てのニュースが日本語に翻訳されれば、それほど楽な事はありません。日本の医療状勢、経済状勢などにアンテナを張っておくだけでも大変で、日々の業務に追われているとあっという間に情報遅れになってしまいます。それに加えて英語で発信される世界の理学療法の流れにも注目しようとなると、めまいが起こってしまいます。誰かがWCPTの主要なニュースだけでも翻訳して配信してくれればいいのになと思います。私がやるか? 無理かなぁ。けど需要があるならやろうかな。試しに9月のニュースから。

2016年5月8日日曜日

JRAT大阪 熊本地震派遣 報告会

昨日、大阪府理学療法士会が、現在も派遣中のJRAT大阪の活動についての報告会を開催しました。そもそもJRATとは、どういうものなのか、私自身、よく分かっていなかったのですが、報告会に参加し、様々な情報を得ることができました。
 JRATの始まりは2011/3/11の東日本大震災でした。発災後2ヶ月が経とうとする5/5に10団体が結束して作ったリハチームが現地の避難所に入りました。しかし、入ることができたのはたった3つの避難所でした。それは、あまりに派遣した時期が遅かったからです。発災後、すぐに行かなければ、ボランティアは必要なところに配備され、後から来た人には「もう間に合っています」ということになります。その教訓があり12団体が協力し、JRAT(大規模災害リハビリテーション支援関連団体協議会)を作り、平時からの備え(研修・啓発等)を行っています。
 財源は豊富にあるわけではなく、今回の熊本地震における派遣は、JMAT(医師会の災害医療チーム)の傘下に入り、災害救助法がカバーできる範囲での費用弁済される予定だそうです。しかし活動全てが自腹になってしまう可能性もある、とのことでした。
 JRATが全国レベルでの災害リハビリコーディネーター養成研修会を実施し、その後、各都道府県で地域JRATが発足しています。JRAT大阪は比較的活発に早い段階から活動をしているという話でした。
 今回の熊本地震の発災翌日4/15には東京にJRAT災害対策本部が立ち上がり、熊本にも現地のJRAT災害対策本部が立ち上がりました。発災後9日目には医師を含むチームが現地に入り、活動を開始しました。東日本大震災の時と比較すると初動がかなり早くなっています。
 リハ関係職種が災害医療チームに入る利点として、複数の報告者の発表を聞いてまとめてみると、次のようになります。
  1、リハトリアージができる
  2、廃用予防、生活不活発病の予防ができる
  3、ICFを用いた考え方ができる
  4、ADLに関しての知識が豊富
  5、環境設定が得意
  6、他職種との連携が得意
 リハトリアージとはリハ的な関わりの必要度に応じて被災者を選別することで、JRATのマニュアル(無料ダウンロード可→http://www.jrat.jp/images/PDF/manual_dsrt.pdf)にも記載されています。また被災者の疾患や生活環境によっては廃用症候群に至る可能性もあり、そうならないためのICFの枠組みでの思考が重要です。特に環境因子は大きく影響を与え、環境設定を適切にすることで廃用症候群を防げる、ということも分かりました。(前回の記事に書いた、自宅よりも動く環境になり被災前よりも元気になった高齢者の例)
 また、今回JRATは私が活動したAMDAが入っている避難所には介入をしなかった、とのことでした。AMDA医療チームにPTが入る前にJRATが訪問しリハ的な介入が必要そうな人の選別がされ、AMDAにPTが入ってから、そのPTに引き継がれたそうです。AMDAのPTは1か所で活動しており、他の避難所の状況はあまり知らなかったのですが、いくつかの避難所を回っているJRATから見ると、AMDAが入っている避難所は、衛生面・環境面・支援体制等が非常に整備され、「さすがプロの医療支援団体だなぁ」という印象だったそうです。
 今回の報告会で、AMDAで活動した自分自身の経験と、JRATから見た視点が融合できて、非常に勉強になりました。
 具体的な活動についても報告がありましたが、詳しく書くときりがないので、また別の機会に紹介できたらさせていただきます。

2016年5月3日火曜日

熊本地震 緊急医療援助 理学療法士編

 4月14日から続いている熊本地震により、被災された方々にお見舞い申し上げると共に、犠牲になられた方々およびその家族の方々にお悔やみ申し上げます。一日も早い復興を願い支援させて頂きます。
 私は4月28日から5月2日までの5日間、熊本の益城町にある避難所で医療支援をしているAMDAのボランティアスタッフの一員として活動させて頂きました。AMDAの医療チームは医師・看護師・薬剤師・理学療法士・鍼灸師・介護福祉士・調整員等で構成されています。
 前任者として2名の理学療法士が避難所で活動しており、私がその活動を引き継いだ形です。前任者は避難者の中からADLの低い方、低下するだろうと予想される方に対して離床を促したり、離床しやすい環境の整備をして下さいました。生活環境の改善として、ベッドが必要な方に医療用ベッドや災害支援用の段ボールベッドを設置しました。数に限りがあるベッドなので、優先度の高い方にできるだけ使って頂けるように、医師と相談しながら、また周りの避難者に了解を取りながら、トラブルにならないよう行われました。
段ボールベッド
慎重に行う必要のある事として、特別な・数に限りのある物資を渡す時に「どうしてあの人にだけ?」と思われないようにする事です。不満を口に出されない方もいる事も念頭に置いておきます。
 同様に、理学療法的な介入のし過ぎには気をつけないといけませんでした。「なぜあの人だけリハビリの先生が毎日来るの?」となってはいけません。理学療法士のボランティアが一人や二人では避難所の数百人をみることは到底できません。また、地元の医療に徐々にバトンタッチしていく必要があるため、地元で今後受けられる理学療法以上の理学療法も行うべきではないでしょう。
 私が行った活動は、段ボールベッドの作成や、前任者が行った環境設定のフォローアップ、共有スペース(出入り口や通路など)に潜む転倒の危険のある場所の修繕、要介護者の離床の促しやレクリエーション、震災により骨折した避難者の動作指導などです。
段差解消
 他の団体から歯科医や栄養士、福祉用具などの支援も頂き、また近隣の老人福祉施設で要介護者の入浴もして頂きました。
栄養師ボランティアとAMDA医師・PTによる聞き取り
(避難者様の写真使用許可あり)
実際、避難所で初めて災害ボランティアとして活動して気づかされた事があります。活動前は避難者の廃用症候群・生活不活発病を防ぐことが必要だと思っていました。しかし、避難所では、排泄は少し離れた仮設トイレまで行かないといけない、そのために普段は使っていなかった階段を使わないといけない、など、自宅にいるときよりも活動量が増える例が多くありました。「家じゃベッドからほとんど動かなかったけど、ここ(避難所)じゃ、たくさん動くから、ばぁさん元気になった」なんて声も聞かれました。廃用症候群や生活不活発病などと言うものは、避難所にいる時よりも、今後、仮設住宅に入ってからの問題なのかな、と感じました。むしろ今は若い人も高齢者もオーバーワーク気味なのだと思います。
 疲労や脱水などによる体調不良の方や、腰痛・肩こり・頭痛などの症状の方が多く、鍼灸師の方がかなり忙しく治療をされていました。
医療チーム回診
今回の活動は、JOCVリハビリテーションネットワークのメーリングリストに流れたAMDAからの理学療法士募集を見て、応募したことから始まりました。このような災害時緊急医療援助をしている団体はたくさんあると思いますが、私はあまりまだこの分野は詳しくなく、今後さらなる情報収集をしようと思っています。
 私の活動はたった5日間で終わり、支援できたことと言えば、ほんの少しのことだと思います。しかし、小さなことの積み重ねで前に進んでいくものだと思っています。チームの医師が「ホームランは打たなくてよい、送りバンドをするつもり」で活動しようとおっしゃっていました。支援は永遠に続くのではなく、減っていくもの・終わるものであり、地元の力で復興できるようになるまでの繋ぎであることを学びました。なので、私ができたことは少しのことでしたが、被災者の方の喜ぶ姿を見ることができたし、役に立てたのではないかと思います。そして、私自身も医療や福祉の原点を見たようで、非常に勉強させていただきました。
 この活動は、被災地の避難所を借りて、させて頂いた活動であり、決してやってあげた、という活動ではありません。被災者の方々に感謝させていただきます。

<リンク>
AMDA http://amda.or.jp/
 理学療法士に関するAMDA記事
  速報9 http://amda.or.jp/articlelist/?work_id=4983
  速報10 http://amda.or.jp/articlelist/?work_id=4989
  速報11 http://amda.or.jp/articlelist/?work_id=4993
  速報12 http://amda.or.jp/articlelist/?work_id=4995
  速報14 http://amda.or.jp/articlelist/?work_id=5012
 FACEBOOKページ
JRAT 大規模災害リハビリテーション支援関連団体協議会

2015年10月28日水曜日

WCPT Congress

 世界理学療法連盟の学術大会が今年はシンガポールで行われました。4年に1回、加盟国で持ち回りで開催されており、1999年にはアジアで初の開催となる日本・横浜で行われました。外国から2000人、国内から3000人の予想を上回る参加があったと聞いています(参照元 http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/prdl/jsrd/norma/n217/n217_14-01.html。開会式には天皇陛下のご臨席・お言葉があったそうです。また全て英語での開催、日本の技術=AKA博田法の紹介など、その場に居たかったと非常に羨ましく思います。
 このWCPT Congressが次回から2年に1回の開催となるそうです。2年後はアフリカで初の開催となる南アフリカ共和国です。開催スパンが短くなり日本での2回目の開催もそう遠くはないかもしれません。
 PT界の国際情勢とは少し異なりますが、ミレニアム開発目標(MDGs)として途上国の問題に取り組んだ2000年からの15年間が終わり、ポストMDGsとして採択された持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)というものがあります。世界の共通目標として2016~2030年に、途上国も先進国も同様に地球市民として、持続可能な世界・発展・健康などを目指します。
 SDGsにはPTとして取り組める目標もあります。何かを犠牲にして得る発展ではない、というのが「持続可能な」という言葉に込められていますので、自分の手1つで患者を治療し、生活を改善させるPTの技術・知識は正に「持続可能な」人々の健康のための資源だと考えます。
 PT界もSDGsのような国際的な動きに機敏に反応し対応できていければいいな、と思います。

2013年8月1日木曜日

学びたいのに…

 私が国際協力の道に進むきっかけになったイベントが、JICA大阪で行われた高校生セミナーでした。そこで、開発途上国からの研修生たちとの交流の場があり、学びたいのに現地では学べない熱心な人が、日本に研修に来て、一生懸命に勉強している、ということを知りました。当時の私にとってはインパクトの強いイベントで、その後の人生に大きく影響を与えました。
 日本では、勉強しようと思えば何でも自分次第で勉強できる(お金はかかるけど)、しかし、途上国では勉強しようと思っても、教えてくれる人がいない、設備がない、学校があっても通えない、など様々な理由で学ぶことができません。私はいつからか、「学びたいと思っている人に、学ぶ機会を与えられる人になりたい」と思うようになりました。
 その最初の一歩が青年海外協力隊での活動でした。そして、それが終了した今、また途上国でセミナー・研修会などを開催するプロジェクトを企画したいと思っています。
 しかし、学びたいのに学べないのは、なにも途上国の人だけではないと最近分かりました。日本の現場を改めて見渡してみると、若い理学療法士が、疑問や問題を相談する相手がいないため、それを解決しないまま日々の臨床を行っているように感じます。または相談しても回答が得られず、解決しないままの場合もあるようです。日本における「学びたいのに学べない」は、おそらく非常に多くの現場が抱えている問題ではないかと思います。
 日本の理学療法士の質を上げることが、日本の理学療法士が世界で活躍するための必要条件であることは以前書きましたが、そのための一助になれるように、自分の知識や技術、経験を他の人と共有できる環境づくりは、今の職場から小さく始めたいと思っています。
 「学びたいけど、学べない人に、学ぶ機会を」は今後もずっと私自身のテーマになってくるでしょう。

2013年7月14日日曜日

知的財産


私も寄稿させていただきました。
海外技術協力セミナーの20周年記念誌を頂きました。これまで国際協力に尽力してきた先生方や、今世界各国で活躍している先生方、ベテラン・若手、いろいろな人が、様々な視点で寄稿した、非常に貴重な冊子となっています。現在までの歴史やこれからの未来、国際協力の酸いも甘いもちりばめられていて、何度も読み返してしまいました。
 私は、日本の技術・知識を世界に広めたいと考えています。しかし、それにはいろいろ考えなければならないことがあります。一つは、日本の技術・知識を「正しく」伝えることの難しさです。どれだけ良いものでも、間違って伝えると意味がありません。意味がないどころか、日本の技術・知識の信頼が落ちてしまうことになりかねません。「本物」はそうではないのに、治療効果がない、理論が短絡的だ、などと思われることを防ぐために、本物を「正しく」伝えることが必要です。
 そのためには、教える側の技術・知識が高い水準になければなりません。厳しい言い方かもしれませんが、ちょっと研修会に行ったくらいで分かった気になっている人に、技術移転はできないと考えています。例えば関節運動学的アプローチ医学会および関節運動学的アプローチ医学会理学・作業療法士会は、関節運動学的アプローチ博田法(AKA-博田法)の普及・発展のために活動を行っていますが、AKAおよびAKA-博田法を商標登録し、ニセモノが出回ることを防ぐ仕組みを作っています。これにより技術・知識の信頼性、正確性を確保しています。
 誰かが勝手に真似してしまわないように保護する必要のあるものを知的財産と言います。知的財産を守るために、特許権・実用新案権・意匠権・商標権などがあります。診断、手術・投薬といった治療、すなわち医療行為の取り扱いは、「産業上利用可能なものではない」として特許権や実用新案権の保護対象にはなりません。よってAKA-博田法も特許を取ることができません。しかし、この取り扱いも今後は見直される可能性もあります。
 知的財産権について、広い知識を持つことで、私の将来の国際協力に繋げていきたい、と今考えています。日本の技術・知識を「正しく」世界に発信し、それを守り、質を下げないようなシステム構築ができるようになりたいです。
 逆に海外から良いものを取り入れる際にも、知的財産に関する知識は役に立つと思います。
 日本の技術が世界の技術に、○○国の技術が世界の技術に! 
 
 

2012年11月27日火曜日

ステップアップのためのステップダウン

 もう派遣されて15か月になります。この間に、ドミニカ共和国の理学療法の質の低さを目の当たりにし、どのようにしたら改善されるのか日々考えてきました。しかし、答えは出ません。答えが出たと思ったら、その答えが違うことに気づき、また考え直す、という繰り返しの日々です。

<マンパワーになりながらでも地道に教えていこう>
 派遣前は、現地の人々と共に働き、ドミニカ共和国に足りないものを見つけ、直接指導し、理学療法の質を上げていこうと考えていました。一緒に働かないと、現地の人と同じ目線に立たないと問題は見えてこないと思い、マンパワーでもいい、という覚悟でした。

<大学教育を変えなくては>
 しかし派遣後、活動を初めてすぐ、現地スタッフの技術レベルの低さももちろんですが、基礎知識の欠如が指導の大きな妨げになりました。個別に少しずつ教えていけばよい、と思っていたのですが、個別では到底追いつかない莫大な基礎知識を教えないといけないことに気づきました。大学での教育レベルの向上が必要だと感じました。

<国語・算数もできないんじゃ話にならん>
 ドミニカ共和国には様々な職種のJICAボランティアや専門家が派遣されています。小学校教諭として派遣されているボランティアの話を聞いたとき、大学教育はもとより、初等教育から質が低いことを知りました。学校の先生が分数の計算を理解できない、分度器の使い方が分からない、というレベルです。
 大学の理学療法士学科に入るためには入学試験がありますが、数学の点数が悪くても、大学で数学の授業を受ければいいらしいのです。つまり、入学者を選ぶ試験ではなく、入学者の入学後の必須科目を決めるための試験なのです。初等教育の質向上が必要だと感じました。

<でも何とか現状を変えなくては>
 「教育が悪いからだ」と結論づけると、理学療法士にすることはない、ということになってしまいます。しかし、何もしないわけにはいきません。目の前に患者がいて、理学療法という名のものが患者に提供されているのです。よって、「医原性障害をできるだけ減らす」という目標を立てました。そのためには、愛護的に・丁寧に触る、関節を傷つけないよう運動学に基づいて動かす、理学療法士の体全体を使うなどの運動療法の基礎を教えようとしました。これらは各種の関節運動学的アプローチ(AKA)の基本概念としても知られています。
(*日本はAKAを基に改良を重ね、新たな知見を加味した診断・治療技術としてAKA博田法というものがあります。)

<スタッフの変化に手ごたえ>
 運動療法の基礎や触り方・動かし方などを指導したのですが、多少の改善はあるものの臨床で使えるレベルには決してなりません。それでも、指導したスタッフの仕事は丁寧にはなりました。下手でも丁寧にすることは非常に大切だと思います。丁寧に仕事をすることが上達への近道だと思い、指導を続けようと思いました。

<「日本では…」と言い続けていいのか?>
 ドミニカ共和国の理学療法の質は低い、と繰り返しこのブログでも書いてきましたが、では日本の理学療法の質は高いのか? と考えることがありました。友人の話や自分の目で見たことなどを総合すると、正直な所、「ドミニカ共和国の理学療法士と同じレベルの理学療法士が日本にもいる」と言わざるを得ません。もちろん素晴らしい理学療法士もいます。しかし、JICAボランティアに応募する理学療法士の中に、能力のない理学療法士が混ざってくる可能性があるのです。
 よって、日本においては、理学療法士の質の向上をこれから更に推し進めていかなければいけないと考えます。国際協力を志す理学療法士に、きちんとした知識と技術を身につけてもらわないと、今のままでは能力のない理学療法士が国際協力に携わることになると思います。

 こういう事を書いている私ですが、私自身、能力のある理学療法士とは言えません。理学療法の基礎ですら教えることができません。上辺だけの知識と、それに基づいた技術で仕事をしていたことが、ドミニカ共和国での経験ではっきりしました。日本に戻ったら、理学療法、すなわち運動療法・物理療法・基本的動作訓練について、基礎から勉強をし直そうと思います。ステップアップのためのステップダウンです。

2012年7月27日金曜日

国際標準化

大阪工業大学
 日本には世界に誇る技術がたくさんあります。国内だけでも大きな市場ですから、外に目を向ける傾向があまりなかったせいか、世界に誇る技術も日本国内に留まっていることが少なくありません。平松幸夫氏(大阪工業大学教授)は「国際標準化は仲間づくりである」と述べていますが、この仲間づくりをする人材が日本には不足しています。ですから、日本の技術を国際的に標準化しようと思ったときに、他国へ提案しても、すでに別の標準で仲間づくりが行われていたり、拒絶反応を示されたりするのです。他の国を見ると、標準化に携わる人材の育成を長期的に行っているところが多いそうです。日本の企業では2年程度で異動があったりして長期的な人材育成ができない環境にあります。「日本は特許申請数では世界一なのですが、有効な特許が少ない」と言われるのも、この辺りが原因なのでしょう。
 現在、私は、日本発祥の物理医学の理論・技術「関節運動学的アプローチ(以下AKA)博田法」を海外でも普及させようと活動しています。ターゲットはスペイン語圏の約20か国の医師・理学療法士・作業療法士です。しかし、このAKA博田法は、日本が世界に誇るべき技術なのですが、日本で広く認められているかというと、そうではありません。AKA博田法の理論や技術が優れていることを知っている医療従事者は、その治療効果を目の当たりにし、肌で感じ取った人のみで、そう多くはありません。既存の技術を用いて働いている人で、AKA博田法を教科書や噂で聞いた程度の人にとっては、受け入れがたいものです。
 平松氏は国際標準化について「研究・開発の段階から、世界各国と共同することが望ましい」と述べています。これは国内での標準化でも同様でしょう。「研究・開発の段階から、関係機関と共同すること」、例えば、研究機関・教育機関・医療機関などと早くから連携し、仲間をつくることで、拒絶反応をなくすことができると思います。AKA博田法に関してはこれが不十分だったのではと考えます。
 昨日の日経の経済教室で平松氏は、開発には3つのステップがあると述べていたそうです。(参考→日本のガラパゴス現象を問う)1「要求条件の明確化」、2「要求条件を満たすための基本構造の設計」、そして3「技術開発」です。日本はこの3つのステップの内、最初の2つのステップを踏まないで、いきなり技術開発に入ってしまう、という話でした。AKA博田法も3つ目のステップにのみ心血が注がれたのだと思います。
 今後、AKA博田法を日本のみならず海外にも普及させるために、ステップ1、とステップ2について考え直し、長期的な人材育成を行い、仲間を増やしていきたいと思います。

2012年4月15日日曜日

AKA博田法と私の5年間

4月になり理学療法士として6年目の年度を迎えました。理学療法士として働き始めて丸5年が経過したのです。この5年、非常にいろいろな事がありました。
 1年目、就職してすぐAKA医学会理学・作業療法士会に入会しました。そして同じ年に大阪で行われたAKA博田法の基礎コース(10日間でAKA博田法を一通り全て勉強するコース)に参加し、AKA博田法の世界へ入って行きました。
 AKA博田法とは、日本人医師博田節夫氏により開発された物理医学における診断・治療の技術であると同時に、運動療法を行うための技術です。理学療法の技術には非常に多くの種類がありますが、日本発祥の医学的に体系づけられた技術というのはAKA博田法以外に存在しません。
 1年目の試用期間が終わり、有給休暇が取れるようになると、学生時代に実習でお世話になった先生のツテで、博田先生の診察・治療の見学に月1回、足を運ぶようになりました。また同じ先生のツテで、診療にAKA博田法を用いられている先生の勉強会へも参加させていただくことになりました。休みの日には研修会に参加したり、同級生や先輩の先生方と共に勉強会を行ったりと充実した日々を過ごしました。
 2年目も継続して博田先生の診察見学に行き勉強しました。AKA博田法の研修会や学会、勉強会などにも欠かさず参加しました。臨床でもAKA博田法を使用していました。しかし、この頃、同僚からAKA博田法ばかりで周りが見えていない、という忠告を受けました。他の手技を知った上でAKA博田法を選ぶのなら良いが、他を何も知らないでAKA博田法に集中しているのはどうか、というアドバイスでした。当時の私はアドバイスではなく批判に聞こえましたが。
 3年目には、AKA博田法を補完する技術であるANTの基礎となる「関節神経学」に興味を持ち、学問的に深く学べる機会がないか探し始めました。2年目の時にアドバイスをくれた同僚の影響で、大学院で関節神経学を研究できる所を探しました。しかし、研究がストップしてしまっている分野であり、諦めることになりました。
 4年目には、高校生のときからの目標であった国際協力に向かって行動を始めました。JICAボランティアの要請書に書かれている経験年数3年以上という条件をクリアしたからです。職場の事務との話し合い、労働組合との話し合いなど努力しましたが、退職してのボランティア活動という形になりました。いつからか「AKA博田法を世界に広めることが夢」と周りに語るようになっていました。
 5年目のスタートは臨床ではなく、駒ケ根訓練所でした。2か月半、駒ケ根で語学や国際協力について勉強し、6月末にドミニカ共和国に来ました。活動の中で、AKA博田法をどのように広めていくか試行錯誤しました。
 そして現在、6年目となりました。現地スタッフの一部にAKA博田法の基礎に則り、触診や関節の触り方、運動療法などを指導しています。また、AKA博田法をより多くの人に知ってもらうための計画が一つ進行中です。いずれ、いろいろな形で報告できればと思います。
 AKA医学会理学・作業療法士会に入会して5年が経過したわけですから、次の2月はAKA博田法の認定試験です。同期で受験する人もきっと何人かいると思います。私はその時、まだドミニカ共和国にいるので、遅れを取ることになりますが、追いつけるように頑張りたいです。

2012年3月30日金曜日

第47回理学療法士国家試験合格発表

 理学療法士の国家試験が今年は2月26日にありました。私はちょうど5年前に受験しました。その時も2月末だったと記憶しています。私と一緒に受験した人の数は7000人強でしたが、今回は12000人弱と、大幅に増えています。養成校の増加に伴う受験者数の増加です。
 合格発表は、私の時は5月でしたが、徐々に最近早くなってきており、今年は今日、3月30日が合格発表です。合格率は82.4%と去年(74.3%)よりは上がったものの、平成に入ってからの統計では2番目に低い合格率となりました。
 国家試験は、世に排出される理学療法士の質の維持と、同時に教育の質の維持、という作用をもたらしていると思います。養成校乱立時代があり、教育の質の低下に関して、みなが不安を抱きました。臨床や教育の経験が未熟な者が教員となっていったからです。また、少子化の影響も相まって、学生の取り合いも起こりました。近年、学生数が確保できず、募集停止に至った養成校がいくつも現れています。そんな状況で、国家試験という関門がもしなければ、理学療法士の質は低下し、信頼を失い、理学療法士を目指す若者はいなくなり、この資格自体がなくなってしまう危険があるのです。
 ドミニカ共和国では、この国家試験という第三者機関の評価がありません。理学療法士を目指す者は、大学の理学療法学科に入り、卒業と同時に理学療法士です。また学生の内から病院で働くことができますので、理学療法士と名乗っている学生もいます。(最近驚いたのは、私の配属先の現地スタッフのおよそ半分は大学を卒業していない、という事です。)つまり、学生教育の質が、そのまま理学療法士の質、延いては医療サービスの質に直結するのです。
 そして、教育の質はどうかと言うと、残念ながらWikipediaレベルです。同僚が大学に教えに行っていますが、wikipediaで講義準備を行っています。国家試験がないので、学生に低いレベルの教育をしても問題がありません。向上心も芽生えません。教育の質の低さが、理学療法士の質を下げ、その理学療法士がいずれ教える立場になる。
 それでも、ドミニカ共和国の理学療法士という職種が消滅しない原因はなんなんだろう、と考えてみました。おそらく、医師による治療の結果が悪い患者に、理学療法にいかせて、「後はあなたの頑張り次第」と言うためなんだと思います。事実、長期間の創外固定、整復ができていないピンニング、診断されていない脳障害、RSD、などの諦められた患者を多く見ます。そんな患者たちが理学療法でも何も良くならないと気づけば、もう医者の所にも理学療法士の所にも行かなくなり、忘れられてしまう。
 しかし、こちらの理学療法士の中にも、熱心に私の教えについて来てくれる人がいます。私がやっている事は、カリブ海に小石を一つ投げ入れるような、小さな事ですが、小さなステップから次のステップにつなげていけるようになればいいなかぁと思います。国家試験の話題から、大きく話がそれてしまいました。

2011年11月24日木曜日

技術情報支援制度

 JICAが開発途上国に派遣して技術移転を行っている人を対象に、「技術情報支援制度」というものがあります。これは、JICA研究所(東京都新宿区)に入っているJICA図書館が行っている制度です。JICA図書館にはODA資料や各国の情報を扱った図書などが所蔵されており、一般の方でも閲覧可能です。平日10時~18時までです。各国言語の辞書や語学学習教材などもあるようなので、派遣前などの語学学習にも使えるかもしれません。
 さて、そのJICA図書館が行っている「技術情報支援制度(←詳細はクリック)」の対象者ですが、私も含まれます。そして、その制度を利用して、先日、2つのDVD教材を申請しました。医歯薬出版株式会社から出ている『DVD版 関節運動学的アプローチ(AKA)-博田法 第2版』と『DVD版 関節神経学的治療法(ANT)』です。申請してからちょうど1か月でJICA在外事務所に到着しました。
 現地で手に入るものは申請できないので、スペイン語の医学書、などは欲しいけど申請できません。私の配属先にはこれまで派遣されてきたボランティアが残していった様々な本がありますが、その多くが「○○のリハビリテーション」や「リハビリテーションマニュアル」など、簡潔にまとまってはいるけど情報不足、という本です。そして、内科学、外科学など臨床医学の本が全くありませんので、病気のことを調べようと思うと、インターネットに頼るしかありません。(インターネットでは信用できる情報であるかを吟味しないと、誤った情報で患者を診ることになります。私は「メルクマニュアル」を基本的に活用しています。メルクマニュアルを提供しているMSDという会社のメキシコ版からはスペイン語で書かれたメルクマニュアルが参照できます。しかしユーザー登録が必要です。)なので、本当に欲しいものが必ずしも手に入る、とは限らないのがこの制度の欠点かもしれませんが、他にも私たちを支援する制度はいくつかあるので、使える制度をできるだけ有効活用すれば、この問題は解消されます。
 この制度で申請できるもの=現地で手に入らないもの、それは「日本オリジナル」のものになってくると思います。様々な分野で「日本発祥の技術・知識」があるはずです。それは物理医学においてもそうです。これが日本の技術だ、というものを見せつけるための、非常に有用な制度がこの「技術情報支援制度」だと思います。他の分野でも日本オリジナルをこの制度を使ってアピールしていって欲しいと思います。

2011年10月31日月曜日

在外研修制度(参加型)

 明日からコスタリカへ「在外研修制度(参加型)」という制度を利用して研修に行ってきます。この制度の概要は以下の通りです。
(以下抜粋)
・概要
 ボランティア自身の技術をより現地のニーズに適したものとすること、受入国のみならず他の国や地域に共通する課題に取り組むことを目的として、配属先の同僚・関係者等(以下「パートナー」)や他国派遣ボランティアとともにセミナー・研修を開催、あるいはそれらに参加することで、当該課題への取り組みについて研究・議論を深め、ボランティアの活動をより効果的なものとするための制度です。在外研修には、ボランティア及びパートナーが自らの企画・立案・実施する開催型と、他国のボランティア及びパートナーが開催するセミナー・研修や、既存のセミナー・研修等に参加する参加型の二つのタイプがあります。
・条件
 1.ボランティアの活動上支障がないこと
 2.研修先国について、安全管理上又は外交上支障がないこと
 3.ボランティアがパートナーとともに参加すること
 4.開催型の場合には、開催国を含めて3ヶ国以上からのボランティアおよびパートナーの参加があること
 5.受入国共通の課題や問題点について参加者がともに取り組む機会があり、成果が期待できること
 6.配属先が研修に参加を要請または承認していること(文書取り付けが必要)
(以上抜粋)
 3日間の研修で、内容は「急性期・慢性期の脊髄損傷、脳卒中」「脳性麻痺」「末梢性顔面神経麻痺」「筋疾患」「腰痛」「RSD」「関節炎」などの講義が各1時間程度ずつあります。1時間で総論から各論まではもちろん不可能ですので、総論か各論かどちらかを省略しないと薄っぺらい内容になってしまいそうで心配ですが、話すのは医師がほとんどなので、楽しみにしています。(理学療法士から病気について講義を受けるなんて正直ゴメンです。わざわざ外国まで行って聞く話にはなり得ません。)私だけでなく、カウンターパートにとっても医師の話が聞けるのは非常に貴重です。
 ちなみにこの研修会には、同じ職場に派遣されている作業療法士のJICAボランティアと、義肢装具士のJICAボランティアも、それぞれのカウンターパートとともに参加します。また、日系社会で活動されている看護師のJICAボランティアの方も参加します。関連多職種が同じ研修会に参加することで、知識の統一ができ、職種の壁を越えた協力体制ができあがることを期待しています。今、カウンターパートが興味を持っている「チーム医療」というものの礎ができれば、私はその礎を利用して活動を発展させていきたいです。また、現在あまり関与していない急性期患者の対応についても講義があるので、その難しさを知ってもらえたらと思っています。
 コスタリカでは研修が目的なので、観光する時間はほとんどありません。コスタリカと言えば「キャノピー」(上の写真)や、尾が長く美しい鳥「ケツァール」(右の写真)、活火山、海や川のレジャーなどなど、観光業が盛んな国なので見どころはたくさんあります。休暇を取ってコスタリカを訪れるJICAボランティアもたくさんいます。(ドミニカ共和国にもいろいろな国のボランティアが遊びにきてくれますが。)もしかしたら、また観光目的で訪れるかも? という事で、空いた時間はできるだけコスタリカという国を知ることに努めたいと思います。

2011年10月17日月曜日

ボランティア活動報告書(1号)

 JICAボランティアは2年間の派遣中に5回の報告書を書くことが命ぜられています。派遣3か月の時点での活動報告書が承認されましたので、公開したいと思います。この報告書はJICAにより一般に公開されますので、過去の様々な職種の活動を報告書を通して知る事ができます。主に東京・広尾にあるJICA地球ひろばに所蔵されています。

________以下活動報告書________

<要約>

 任国派遣3か月、任地派遣2か月時点での報告書。首都同様、比較的栄えた都市にて生活しており、日常生活での不便はほとんど感じない。配属先のNGOが経営する病院には、多くの患者が来院し、現地スタッフは日々忙しく働いている。長年のボランティア派遣実績があり、ボランティアにとっては働きやすい環境が最初から整っていると感じる。現地スタッフの技術レベルは非常に低く、患者に害を与えていることの方が多いが、みな一所懸命に働いているように思われる。カウンターパートは現地スタッフの技術および知識の向上のため、ボランティアに技術指導や講義等を望んでおり、現在までに1度、全療法士を対象にした勉強会を実施した。

<1、活動地域及び配属先の概要>

1)活動地域概要、抱える問題点
 活動地域は首都からバスで2時間ほどのサンティアゴ。大型スーパーがホームステイ先から徒歩圏内に4つあり、日本のホームセンターのような店や、家電量販店のような店も他に存在し、特殊な日本の食材以外は比較的手に入る。車の交通量が非常に多く、歩行者よりも車優先の交通事情故、道路の横断には注意が必要である。ホームステイ先が中心街であることから、車のクラクションや音楽などの騒音が大きいが、徒歩圏内で全ての用事が済ませられることに非常に利便性を感じている。
 道路は舗装されているが、穴が空いていたり、マンホールが盗まれていたり、鉄の棒が地面から出ていたりしており、車だけでなく足元も注意して歩かないと地面には危険が多く潜んでいる。そのため障害者には決して移動しやすい環境ではなく、人の助けが多く必要である。

2)配属先の事業内容、組織体制
 配属先名称はPatronato Cibao de Rehabilitación, Inc.で、1967年12月に設立された現地NGO団体。あらゆる年齢、疾患の患者に「物理医学とリハビリテーション(PM&R:physical medicine and rehabilitation)」を提供することを目的としており、理学療法・作業療法・言語療法・義肢装具作成室・医療相談室などがある。

3)配属先の援助受け入れ実績
 理学療法士 1998年から6代目
 作業療法士 1995年から4代目
 義肢装具士 2008年から2代目

<2、ボランティアが所属する部局の概要>

1)ボランティアが所属する部局の事業内容及び課題
 理学療法は成人中枢疾患部門、小児疾患部門、整形疾患(手を除く)部門、手の外科疾患部門に分かれており、整形疾患部門は男性用と女性用が分かれている。現地スタッフはそれぞれ特定の部門に従事しているが、ボランティアは全部門を広く見渡す立場にいる。

2)同僚の人数および技術レベル
 理学療法に従事しているスタッフは15人。技術レベルはみな同じではないにしろ、概して非常に低いレベルである。適応・禁忌の知識がない状態で、医師の処方通りに流れ作業のように理学療法を行っている事から、禁忌が平然と行われている状況である。また現病歴や病態を把握しようとしていないし、カルテがないことから正確に把握することが困難である。技術向上の意欲があるスタッフが少ないながらも存在するが、多くは自身のやり方に(現地人同士であっても)口出しされたくない様子である。

<3、配属先のニーズ>

1)ボランティアに対して期待している内容
 急性期患者への理学療法提供、運動療法技術の向上、歩行評価法の獲得、チーム医療がカウンターパートより要求されている。そのためにセミナーや実技練習会の実施を依頼され、9月16日に1度ボランティアより勉強会(テーマ:拘縮)を全理学療法士に対して行った。

2)当初要請時のニーズからも変更点
 カウンターパートとしてはニーズの変更は現時点ではないが、ボランティアとしては急性期患者への理学療法提供は、危険とトラブルを秘めていると感じ、積極的に進めたいとは思っていない。

<4、活動計画準備状況>

 現在、治療に難渋している患者がいればボランティアが呼び出されるシステムになっている。しかし、呼び出してくるスタッフは限定されており、関わりのないスタッフも多くいる。現地スタッフの技術と知識の向上のためには、非常に多くの指導を必要とし、現実的ではないので、患者に害を与える行為は何かを教え、その行為を止めさせることができれば、今より治療成績は上がると考える。そのために勉強会を定期的に行ったり、患者を治療しながら教えることを続けていきたい。
 また、11月にコスタリカで行われるセミナーに、当院に派遣されている理学療法士と作業療法士と義肢装具士のボランティア3名と、それぞれのカウンターパート3名が、ともに参加を計画し、共通した知識・技術を得ることで、今後のチーム医療が発展していくことを願う。

<5、受け入れ国の印象>

 交通事情(道路の悪さ、交通マナーの悪さ、交通量の多さ、信号機の故障など)や治安の悪さ(一般人の拳銃所持、殺人事件、強盗など)、電気・水事情(停電、断水)などは、訓練所で事前に聞かされ、日本にいる間に驚かされたので、現地に到着してから改めて驚くことはなかった。治安に関して、悪いニュースばかり聞かされていたが、温厚で明るい性格のドミニカ人と楽しい時間を過ごすことができている。

________以上________

 これは9月末に書いた報告書ですが、現在は、他の関連施設との連携をいかに取っていくか、コスタリカの研修をいかに今後に活かすかを考えています。また、首都に理学療法士と義肢装具士、私のいるサンティアゴに作業療法士のボランティアが増える予定なので、今後、理学療法士・作業療法士・義肢装具士・養護のボランティア間の連携も目指したいと考えています。
 このボランティア間の連携は、算数指導能力向上プロジェクトの隊員の話などを参考にしようと思っています。彼らは週1回、午前中に集まって会議を開いています。いい点はどんどん参考にさせてもらい計画を練っていこうと思います。

2011年8月25日木曜日

DALYs

ハーバード大学
 病気とは罹患して終わりではありません。治療するために医療費がかかったり、病気により働けなくなったり、障害を残したり、寿命を縮めたりします。放置しても治る病気から、難治性の病気まで、非常に多くの種類の病気があることから、病気が人の人生に与える影響も多種多様です。
 ハーバード大学のChristopher MurrayらがWHOや世界銀行と協力して開発した「健康に関する経済指標」があります。Disability Adjusted Life Years=DALYs(ダリーズ)と呼ばれ、病気に罹患したことにより失われた生産活動の総和と生命の短縮を、国ごと、および疾患ごとに算出した値です。例えば、「感染症で死亡する人の数は全死亡数の25%ほどですが、感染症によるDALYs損失は全損失の30%を占める」などのように表現されたり、「外傷によるDALYs損失は全損失の12%ほどだが、14歳以下に限定すると、人口の30%を占めるに過ぎないが、50%と高い」などのように書かれたりします。
 これを利用して、例えば、
  病気A:年間の罹患者数300万人、DALYs=50
  病気B:年間の罹患者数100万人、DALYs=200
だとすると、患者数は少ないが病気Bの治療法の開発や、社会政策の実行などをすべきだと考えることができます。これは患者の数だけでは判断できません。
 また、
  病気C:1億円あればDALYsを100減らすことができる
  病気D:1億円あればDALYsを500減らすことができる
とすると、1億円は病気Dのために使われるべきだ、と考えることができます。また、「病気」を「ある病気の治療法」を置き換えても同じです。ある病気の治療法Dにお金を使うべきです。
 さらに、
  病気E:DALYs=300、これを100減らすのに20億円かかる
  病気F:DALYs=200、これを100減らすのに10億円かかる
とすると、DALYsだけ見れば病気Eを何とかしないといけませんが、対費用効果で考えると病気Fへお金が使われるべきと考えることもできます。こうなった場合はどうすればいいんでしょう? お金があれば病気Eに対して対策を打つのでしょうが、無駄遣いに厳しい世の中ですから病気Eは置いておいて、病気Fにお金が流れるのかもしれません。実際にはもっといろいろな観点で物事を決定するでしょうから、これは一つの考え方として知っておけばいいと思います。
 ところで、理学療法士とは、障害を持った患者に、障害の治療や動作訓練、代替手段の指導などをして社会復帰を促進する職種です。DALYsは国毎の疾患別の値ですが、一人の患者に絞ってみると、理学療法士の腕次第で、その患者のDALYsを下げることができると思います。国中の理学療法士の質が上がれば、DALYsの値は変化する、そんな可能性を秘めた職種だと考えると使命感が沸きますね。
 骨折のDALYsを100としましょう。そして、医師の骨折の治療技術が上がればDALYsが30減る、理学療法士の障害の治療技術が上がればDALYsがさらに20減る、としましょう。しかし、骨折の原因である交通事故を減らす活動をすればDALYsが60減るとすると、医療よりも交通マナーの問題が大きいと言えます。この国の骨折患者をみていると、医療よりも交通マナーやルールの問題だな、と思うことが多々あります。「骨折5回目です」という患者がいるくらいですから。
 というわけで、今日はDALYsからの視点で自分の仕事について考えてみました。

2011年8月19日金曜日

実務経験


派遣前に勤めていた病院です

 青年海外協力隊には実に様々な職種があります。私のような医療系もあれば、農業系、スポーツ系、開発系、教育系、芸術系などに分類できます。医療系や教育系などでは、指定された免許や資格が必要な場合が多いですが、特に特殊な技能がなくても応募できる職種もあり、幅広い人にチャンスがあります。また、実務経験が必須条件のものもありますが、新卒の方でも応募できるものもあります。
 理学療法士の場合は、私が応募した時は、「理学療法士免許」「実務経験3年/5年」が必須で、さらに中には「小児の経験」「男性のみ」などの条件があるものもありました。理学療法士で応募する際に必須である「実務経験」について、私の経験から少し書かせて頂こうと思います。

*この記事は、一つ前の記事のコメント欄でいただいたMIDORIさんの質問に答える形で書いています。私の未熟な経験を元に、感じたままに書いています。勝手な想像も幾分か含まれています。決して一般論ではないので参考程度にご覧ください。

 実務経験は同時に社会経験も含みます。理学療法士としての「実務経験」と、社会人としての「社会経験」に分けて考えます。
  「実務経験」
 私が就職したのは急性期患者を扱う大学病院です。大学附属の病院が3つあり、どれも手術を行う急性期病院です。平均在院日数も少なく、次々に新しい患者が入院してきます。また、一般病院ではあまり見ない難しい病気の患者を担当することもありますし、非常に重症な患者もいます。反対に脳卒中や糖尿病、骨折などの一般的な病気の患者も担当します。非常に幅広い疾患を数多く経験できた、という意味では大学病院での4年間は現在に活かされているプラスの面です。
 急性期を脱して、回復期へ移行した患者は近隣の病院へ転院します。医師の紹介状、看護師の看護サマリー、理学療法士などの情報提供書を持って別の病院に行った後は、ほとんどの場合、経過は追えなくなります。自分の担当していた患者さんのその後は、患者さん自身が知らせに来てくれる場合を除き、不明のまま終了します。附属病院に回復期や維持期を持たない私の勤めていた病院の「実務経験」としてのマイナス点だと思います。
 ですので、国際協力を目指す・目指さない、いずれにしても、急性期から維持期までを同一組織内で見ることのできる病院に就職し、幅広い疾患の、幅広い時期の患者をみることができればいいと思います。しかし、理学療法士も就職先を選ぼうとすると就職難を実感する職種になってきています。このような都合の良い病院は見つからない可能性が高いです。その場合は、できるだけ急性期病院を選んだ方がいいと思います。急性期病院でリスク管理がきちんとできる理学療法士になった方が、開発途上国の病院で働く際には助けにきっとなります。なぜなら、診断もはっきりしない患者が多かったり、運動が人体に与える影響をしらない医師が処方箋を書いたり、緊急時の対応ができないスタッフの中で働いたりするからです。
  「社会経験」
 実習生の中には、「挨拶ができない」「無断欠席」「提出期限を守らない」「きちんとした日本語でレポートが書けない」「できない事から逃げようとする」「怒られると意欲を失う」など、社会人適正に欠ける人が多くいます。こういう人は社会に出て徹底的に矯正されるか、はじき出されるかだと思います。働き始めても1年毎に病院を変わっている、もっと悪いのは数か月で退職してしまう人は、開発途上国で2年なんて活動できるはずがありません。「実務経験3年以上」とあれば「勤続期間3年以上」と読み替えてもいいと思います。
 ただ、どのような所で社会人経験を積めばよいのか? できるだけ大きな組織に属して欲しいと思います。縦社会の中で、いかに自分の意見を主張するか。上の人とバトルするのも良いです。相手を怒らせると本性を見ることができます。本当に能力のある人間は、若者が食ってかかっても怒りません。逆に食ってかかったことが恥ずかしく思うくらい上手にあしらわれます。そんな経験も非常に重要だと思います。また医療職はプライドの高い人たちが多いので、そのプライドを守りつつ、相手の考えを変えさせる術も学んでいくべきです。私の尊敬する先生が「相手を変えるには、まず自分を変えること」と言っていました。簡単なことではありません。しかし、理学療法士である前に一人の人間として成長すべき期間として働いていただければと思います。

 まとめると、急性期から維持期まで一貫して患者をみられる、比較的大きな組織に就職し、理学療法士としての知識・技術だけでなく、社会人として成長することが大切だと思います。
 そして理学療法士としての知識・技術は、多く知っているに越したことはないですが、重要なのは基礎です。基礎とは、解剖学、生理学、運動学などの基礎の基礎から、理学療法の3本柱「運動療法・物理療法・基本的動作訓練」の原理・技術です。特殊な技術も多々あるようですが、基礎ができていれば、理学療法は可能だ、というのが私の考えです。特殊な技術の習得のために、高額な講習費を払って時間をつぶすよりは、基本的な技術を体得することの方が重要だと思います。
 以上、長々と書きましたが、書きつくせない細かい部分は、twitterに投稿していこうと思いますので、そちらも参考にして下さい。

2011年8月17日水曜日

視点を変えて「やるべき事」から「してはいけない事」へ

 これまでの隊員の活動は「ボランティア活動報告書」というもので確認ができます。これを書くことは「派遣に関する合意書」に定められたボランティアの義務であり、一般公開されるという側面から言えば、日本国民に対する報告義務でもあります。
 その報告書は2年間の派遣中に5回提出することになります。第1号は赴任3か月後、第2号は赴任半年後、第3号は赴任1年後、第4号は赴任1年半後、第5号は帰国前、に提出します。第2号報告書に活動計画表を添付する必要があるため、これを提出する12月末までに具体的な活動計画案ができればいいなぁと思います。
 私の配属されている病院には過去5人の理学療法士が日本から派遣されています。その人たちの報告書ももちろん一般公開されており、JICA地球ひろばなどで閲覧することができます。そこに書かれた問題点と、私が思う問題点は完全に一致していました。
  NGO団体である故の資金不足。低い給与。
  患者数が多く時間がない。
  医師の指示通りのことを流れ作業のように行う。
  理学療法を行う上での基礎知識がない。
  理学療法自体の知識がない。
  患者の評価を行わない。(行えない)
  カルテを書かない。(書くことがない)
など。
 上記の基礎知識がない、というのが致命的で、数学、物理などの知識がないと、筋の評価や、動作の評価などができないですし、物理療法の意義や効果も理解できません。また解剖学・生理学はもちろん、病気の知識もないので、血圧測定、腱反射、感覚検査の目的や重要性も理解できません。これらを解決するには分度器の使い方からまず教育する必要がありますが、非現実的です。なので、患者評価をドミニカ人理学療法士に行ってもらう事は不可能かと考えます。こう、早々に「不可能」なんて言ってしまうと、問題から簡単に逃げ出しているように聞こえるかもしれませんが、実際、過去の隊員たちが懸命に評価の重要性を訴え活動してきて、結果「困難極める」と判断してきていますので、同じことを繰り返すべきではないと考えます。
 評価ができないとなると、カルテに書くことが何もありませんので、「カルテを書け」と言うこともできません。初めての患者でいろいろ検査・測定などの評価をすればカルテに書くことが盛り沢山ですが、長期の患者で特に変化を見せない場合は、カルテに「著変なし」と一言書いて終わります。評価した結果の「著変なし」です。しかし、この国の理学療法士の場合は、評価していないので「状態不明。変化分からず」というカルテを毎日書くことになるでしょう。(何もカルテは評価したことを書くためだけにあるのではないのですが、カルテについては別の記事できちんと書きたいと思います。)
 「患者さんの評価をした上で治療プランを決めましょう」という、ごもっともな助言は無意味なものになるので、これまでとは違ったアプローチを考えないといけません。例えば、安静の大切さを伝えるなど、現地理学療法士が患者に与える害をいかに減らすことができるかを目標にしてもいいかもしれません。痛みを与えながらのストレッチは有害であること、頚損の患者を急に起こしてはいけないこと、低血糖症状の人に自主トレをさせてはいけないこと、などなど。「やるべき事」を教えるよりも「やってはいけない事」を教えて、事故のないようにすることなら可能かもしれません。実際、病院内での事故がこれまでどれほどあったのかは今、知らないので聞いてみようと思います。

2011年8月10日水曜日

任地の病院にやってきました。

デスクです
 今日で病院に来てちょうど一週間です。まだ大した活動はしていません。たまに「この患者さんみて」と言われて評価と治療をする程度です。基本的にはデスクで、活動計画を立てるための準備をしています。
 まだ全てを見回せたわけではありませんが、こちらのPTの印象や今後の予定について、初期の段階で書き記しておきたいと思います。
 まずはこちらの理学療法が理学療法には見えません。病人専門のマッサージ店、および病人専門のトレーニングジムのようです。評価もなしに患者が来たら足に重りを巻いたり、ダンベルを持たせたり、プーリーを行わせたりしています。その後、暴力的に見える「関節グリグリ」「筋肉モミモミ」が始まります。
 体調が悪くなった患者には血圧計を巻いて、聴診器も当てずに加圧して、「うーん、分からない」と言っています。(分かる時があるんでしょうか?私が聴診器を当てて測ったら低血圧になっていました。) 病人専門だが病気には対応できないという致命傷があります。ちなみに、低血圧だと言ったのに、寝ていたその患者を起こして、プーリーの前まで歩かせて「はい、やって」と。
 銃創による頸髄損傷で四肢麻痺(現在1か月で随意運動なし)の患者の初回、検査もせず本人からだけの情報で「感覚は全くない」と言っていました。本当か?と言わんばかりに針を取り出して検査すると残存レベルでC5でした。腱反射もみる気配がなかったので私がみましたが、興味がなさそうでした。こちらの評価とは、問診票に書いてあることを患者の言う通りにチェックすることのようです。
 評価はしないし、評価結果を教えても突拍子もないことをします。だからリスク管理なんて到底できなくて、座れない脳卒中の患者をプラットホームで端座位にして、目も手も離してしまうこともあります。当然、後ろに倒れましたが、カウンターパートが「あれは良くない」と叱っても「彼は座っていた」と言い訳してしまいます。座れるか座れないかの評価ができていないし、座れないと分かっていたとしても、理解できない事態です。
 治療できるようになるには、長い長い道のりが必要だと思いますが、その長い道のりを誰も歩もうとしないから、このような状態でのベテラン、中堅ができてしまうのです。もう中堅以上になるとほとんどが学ぶ姿勢を持たず、高いプライドを持ちます。一部の熱心なPTや、若い人(学生も)が目を光らせて私のやることを見てくれますが、ほんの一部です。
 高い鼻を折ってまで勉強しろ、というつもりは全くなく、それで本人がいいなら、私はそれでいいと思います。そもそも私は、「学びたいが学べない人に、学ぶ機会を与えたい」というスタンスでここまで来ました。鼻を折ってしまうと、もう一生勉強しない人になってしまうかもしれないし、そもそも自分がそこで活動しにくくなりますし。だから、学びたいと思っている人を探すことから始めようと思います。学びたいと思っている人には、できるだけ最高のものを提供できるように準備したいと思います。学びたいと思っている人を魚釣り式に探すが、宝探し式に探すか、難しいところです。言葉の壁がまだまだあるので、評価・治療をする場面を見せつけて興味ある人を引き寄せる魚釣り式でいくかもしれません。引っかからない可能性も高いですが。まぁだめなら宝探し(スカウト・勧誘)を始めます。笑
 数か月は様子見、お互いをよく知る期間、と言われるのに、まだ1週間です。なにも偉そうなことはできません。積極的にコミュニケーションを取ろうと思います。今日「あなた嫌い。朝、私が働いている所に来なかったでしょ。」と昼前に言われました。そんなことを言うために、わざわざ患者さんから離れて、今そんなこと言う時か?と心で思いながら「ごめんごめん」と話を流しました。この間、プラットホームで患者さんを倒してしまったスタッフでした・・・。